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第8話 國産自動車と價格の問題・豊田喜一郎(旧字旧仮名)


伏字ふせじ漢字かんじ

いちからろく小1しょういちから小6しょうろくなな中学ちゅうがくおぼえる常用じょうよう漢字かんじです。
小1,❶: 年 , 車
小2,❷: 外
小3,❸: 動 , 安
小4,❹: 産 , 良
小5,❺: 製
小6,❻: 値 , 段

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仮名がな漢字『かんじ』(『かんじ』)のよう括弧かっこいた漢字かんじ原書げんしょ仮名がないている漢字かんじです。


作品さくひんめい國産こくさん自動車じどうしゃ價格かかく問題もんだい
――自動車じどうしゃ製造せいぞう工業こうぎょう一大いちだい難關なんかん――
著者ちょしゃめい豊田とよだ喜一郎きいちろう

 如何いか自❸❶じどうしゃ出來できても、高價こうか經濟けいざいてき使用しようできぬものではやくたゝたたぬ。自❸❶じどうしゃ使用しようするか使用しようしないかは結局けっきょく❻❻ねだん問題もんだい落付おちつくわけだ。はたして日本にほんではどれくらいすうりょうつくれば國❹こくさんしゃとしててきとう❻❻ねだん出來できるであらうか。これれもがりたがる數字すうじであるが、れも確答かくとうすること出來できぬ。現在げんざいれる❻❻ねだんらなくてはならぬ。れる❻❻ねだんとはどのくらいであるか。すくなくとも❷國がいこくしゃよりやすくなければれないであらう愛國心あいこくしんうったへてらうとしても、つき五十ごじゅうだいひゃくだいうにかなるとしても、三百さんびゃくだい五百ごひゃくだい多量たりょうさばこと六敷むつかしい。矢張やは❻❻ねだん競爭きょうそうしなくてはならなくなる。ことひとくせとしてあたらしいものをやすことには一種いっしゅ快樂かいらくおぼえるものであるから、必要ひつよう以上いじょうやす❻❻ねだんたたかれること今迄いままで吾々われわれつくつた機械きかい販賣はんばいよっあきらかである。政府せいふ關係かんけい購入こうにゅうせられるくるまあるい價❻かちだけに購入こうにゅうしていただけるかもれないが、それ以❷いがいのものはかならたたけるたたかれるにきまつたものである。それを愛國心あいこくしんうったへるとこと事實じじつじょう不可能ふかのうであらう。ゆえ❻❻ねだんおもつてやすくしなくてはならないであらうし、またそうしなかつたなら毎月まいつき何百なんびゃくだいくるまさばこと出來できない。如何いか販賣はんばい技術ぎじゅつつてしても、また如何いか宣傳せんでんたくみにするとしても、一時いちじはそれでんとか胡魔化ごまかこと出來できやうがながつづきはしない。❻々だんだん國❹こくさんしゃ❻打ねうちわかつてればそれ相當そうとう❻❻ねだんつてもらへるであらうが、それまでただつてたら御義理おぎり使つかつてみてやらうと程度ていどかんがへで、國❹こくさんしゃはれるほうおおいとおもふ。なに國家こっかためだとふて、さきつて國❹こくさんしゃ使用しようしてみやうとかんがへられるかたすくなことおもふ。矢張やはあたらしいものけにかねをかけてくしなくてはならぬが❻❻ねだんはうんとやすくしなくてはならぬ。國❹こくさんしゃつくつてらうとすればそれくらいこと當然とうぜんかんがへなくてはならぬのであるがはたして❻❻ねだんつて將來しょうら成算せいさんがとれるかどうか。てん❺造せいぞうしゃとしてもっと考慮こうりょようするてんである。
 さいわい自工法じこうほう出來でき程度ていど無謀むぼう❻❻ねだん競爭きょうそうふせがれた。しかぎゃくこれ出來できため❷國がいこくしゃ内地ないちしゃ以前いぜんよりたかくなるようでは申譯もうしわけがない。すくなくともこれ出來できためめに、國❹こくさんしゃ發達はったつため需要家じゅようかやす自❸❶じどうしゃへるようにならなくてはならぬ。てん吾々われわれ自❸❶じどうしゃ❺造せいぞう業者ぎょうしゃにはおおきな責任せきにんがある。しかはじめからさうやす出來できないのは當然とうぜんである。現在げんざい國❹こくさんしゃとしてれる❻❻ねだんつて、經濟けいざいてき❺造せいぞう可能性かのうせいるかうか❻❻ねだんやすくするのはいが、れがためめに材料ざいりょう❺作せいさくわるくして使用しようへないようになつたら、結局けっきょくなんにもならぬ。此處ここら國❹こくさん自❸❶じどうしゃ出鼻でぱないて非常ひじょう困難こんなんがある。やすくていものを❺作せいさくすればかなられると原則げんそくには何等なんら變化へんかはないがはじめからやすくていものが出來できはずはない。難關なんかん如何いかにして突破とっぱするか。自工じこうほう無理むり競爭きょうそうこと❷國がいこくしゃごと基礎きそ充分じゅうぶんかたまつた實力じつりょくのある會社かいしゃのダンピングをふせ意味いみおい有効ゆうこうではあるが、正當せいとうなる競爭きょうそうおいては矢張やはみずからのちからたよほかいたかたない。
 わたくしちち自❸❶じどうしゃつくらぬかと何度なんどふたかわからない。しかれを躊躇ちゅうちょして三❶さんねん四❶よねんけなかつたとふのは、てん考慮こうりょしたからである。技術的ぎじゅつてき實力じつりょく養成ようせい經濟けいざいてき實力じつりょく養成ようせいをしてから❺作せいさくかからねばならぬ。勿論もちろん自工じこうほうなどゆめにもかんがへてなかつたので、乘用じょうようしゃ二百にひゃくだい❺作せいさくたいして、いちだいあたくらい損失そんしつをしてくらいつづけてけば國❹こくさんしゃとしてみとめられるようになるか、またその❺作せいさく相當そうとうした❻❻ねだんつてもらえるようになるか、それまで辛抱しんぼうはたして出來できるかどうかその辛棒しんぼうためげれば國❹こくさんしゃとして成立せいりつしない理由りゆうはないでもないようおもはれる。他工業たこうぎょうすべ❷國がいこくよりやすくてしかいものをつく能力のうりょくのあるくにが、自❸❶じどうしゃ❺造せいぞうだけはうしてもやすくていものがつくれない理由りゆうはないであらうとかんがへで過去かこすう❶間ねんかん技術ぎじゅつ養成ようせい會社かいしゃ内容ないよう充實じゅうじつ努力どりょくしてた。昭和しょうわはちねんごろやつと技術的ぎじゅつてき基礎きそ程度ていどまで出來できた。會社かいしゃとしての經濟けいざい状態じょうたいわるくない。さいおもつて自❸❶じどうしゃ❺造せいぞうあたらねば、永久えいきゅうけること出來できぬとかんがへ、おもつて❺作せいさくりかつたのが昭和しょうわはちねん九月くがつ一日ついたちである。すべ事業じぎょうをつけはじめたならば一瀉いっしゃ千里せんり遂行すいこうするのがかえつて經濟けいざいてきである何物なにものかえらずにすすんではたが何分なにぶん手馴てなれぬ仕事しごとである。此處ここらさんねんかんついやしたことはずかしい次第しだいである。

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作品さくひんめい國産こくさん自動車じどうしゃ價格かかく問題もんだい
――自動車じどうしゃ製造せいぞう工業こうぎょう一大いちだい難關なんかん――
著者ちょしゃめい豊田とよだ喜一郎きいちろう

 如何いか自動車じどうしゃ出來できても、高價こうか經濟けいざいてき使用しようできぬものではやくたゝたたぬ。自動車じどうしゃ使用しようするか使用しようしないかは結局けっきょく値段ねだん問題もんだい落付おちつくわけだ。はたして日本にほんではどれくらいすうりょうつくれば國産こくさんしゃとしててきとう値段ねだん出來できるであらうか。これれもがりたがる數字すうじであるが、れも確答かくとうすること出來できぬ。現在げんざいれる値段ねだんらなくてはならぬ。れる値段ねだんとはどのくらいであるか。すくなくとも外國がいこくしゃよりやすくなければれないであらう愛國心あいこくしんうったへてらうとしても、つき五十ごじゅうだいひゃくだいうにかなるとしても、三百さんびゃくだい五百ごひゃくだい多量たりょうさばこと六敷むつかしい。矢張やは値段ねだん競爭きょうそうしなくてはならなくなる。ことひとくせとしてあたらしいものをやすことには一種いっしゅ快樂かいらくおぼえるものであるから、必要ひつよう以上いじょうやす値段ねだんたたかれること今迄いままで吾々われわれつくつた機械きかい販賣はんばいよっあきらかである。政府せいふ關係かんけい購入こうにゅうせられるくるまあるい價値かちだけに購入こうにゅうしていただけるかもれないが、それ以外いがいのものはかならたたけるたたかれるにきまつたものである。それを愛國心あいこくしんうったへるとこと事實じじつじょう不可能ふかのうであらう。ゆえ値段ねだんおもつてやすくしなくてはならないであらうし、またそうしなかつたなら毎月まいつき何百なんびゃくだいくるまさばこと出來できない。如何いか販賣はんばい技術ぎじゅつつてしても、また如何いか宣傳せんでんたくみにするとしても、一時いちじはそれでんとか胡魔化ごまかこと出來できやうがながつづきはしない。段々だんだん國産こくさんしゃ値打ねうちわかつてればそれ相當そうとう値段ねだんつてもらへるであらうが、それまでただつてたら御義理おぎり使つかつてみてやらうと程度ていどかんがへで、國産こくさんしゃはれるほうおおいとおもふ。なに國家こっかためだとふて、さきつて國産こくさんしゃ使用しようしてみやうとかんがへられるかたすくなことおもふ。矢張やはあたらしいものけにかねをかけてくしなくてはならぬが値段ねだんはうんとやすくしなくてはならぬ。國産こくさんしゃつくつてらうとすればそれくらいこと當然とうぜんかんがへなくてはならぬのであるがはたして値段ねだんつて將來しょうら成算せいさんがとれるかどうか。てん製造せいぞうしゃとしてもっと考慮こうりょようするてんである。
 さいわい自工法じこうほう出來でき程度ていど無謀むぼう値段ねだん競爭きょうそうふせがれた。しかぎゃくこれ出來できため外國がいこくしゃ内地ないちしゃ以前いぜんよりたかくなるようでは申譯もうしわけがない。すくなくともこれ出來できためめに、國産こくさんしゃ發達はったつため需要家じゅようかやす自動車じどうしゃへるようにならなくてはならぬ。てん吾々われわれ自動車じどうしゃ製造せいぞう業者ぎょうしゃにはおおきな責任せきにんがある。しかはじめからさうやす出來できないのは當然とうぜんである。現在げんざい國産こくさんしゃとしてれる値段ねだんつて、經濟けいざいてき製造せいぞう可能性かのうせいるかうか値段ねだんやすくするのはいが、れがためめに材料ざいりょう製作せいさくわるくして使用しようへないようになつたら、結局けっきょくなんにもならぬ。此處ここら國産こくさん自動車じどうしゃ出鼻でぱないて非常ひじょう困難こんなんがある。やすくていものを製作せいさくすればかなられると原則げんそくには何等なんら變化へんかはないがはじめからやすくていものが出來できはずはない。難關なんかん如何いかにして突破とっぱするか。自工じこうほう無理むり競爭きょうそうこと外國がいこくしゃごと基礎きそ充分じゅうぶんかたまつた實力じつりょくのある會社かいしゃダンピングだんぴんぐふせ意味いみおい有効ゆうこうではあるが、正當せいとうなる競爭きょうそうおいては矢張やはみずからのちからたよほかいたかたない。
 わたくしちち自動車じどうしゃつくらぬかと何度なんどふたかわからない。しかれを躊躇ちゅうちょして三年さんねん四年よねんけなかつたとふのは、てん考慮こうりょしたからである。技術的ぎじゅつてき實力じつりょく養成ようせい經濟けいざいてき實力じつりょく養成ようせいをしてから製作せいさくかからねばならぬ。勿論もちろん自工じこうほうなどゆめにもかんがへてなかつたので、乘用じょうようしゃ二百にひゃくだい製作せいさくたいして、いちだいあたくらい損失そんしつをしてくらいつづけてけば國産こくさんしゃとしてみとめられるようになるか、またその製作せいさく相當そうとうした値段ねだんつてもらえるようになるか、それまで辛抱しんぼうはたして出來できるかどうかその辛棒しんぼうためげれば國産こくさんしゃとして成立せいりつしない理由りゆうはないでもないようおもはれる。他工業たこうぎょうすべ外國がいこくよりやすくてしかいものをつく能力のうりょくのあるくにが、自動車じどうしゃ製造せいぞうだけはうしてもやすくていものがつくれない理由りゆうはないであらうとかんがへで過去かこすう年間ねんかん技術ぎじゅつ養成ようせい會社かいしゃ内容ないよう充實じゅうじつ努力どりょくしてた。昭和しょうわはちねんごろやつと技術的ぎじゅつてき基礎きそ程度ていどまで出來できた。會社かいしゃとしての經濟けいざい状態じょうたいわるくない。さいおもつて自動車じどうしゃ製造せいぞうあたらねば、永久えいきゅうけること出來できぬとかんがへ、おもつて製作せいさくりかつたのが昭和しょうわはちねん九月くがつ一日ついたちである。すべ事業じぎょうをつけはじめたならば一瀉いっしゃ千里せんり遂行すいこうするのがかえつて經濟けいざいてきである何物なにものかえらずにすすんではたが何分なにぶん手馴てなれぬ仕事しごとである。此處ここらさんねんかんついやしたことはずかしい次第しだいである。

■ 原書情報(青空文庫) 図書カード:No.53532(旧字旧仮名) https://www.aozora.gr.jp/cards/001362/card53532.html https://www.aozora.gr.jp/cards/001362/files/53532_56385.html 底本:「豊田喜一郎文書集成」名古屋大学出版会    1999(平成11)年4月15日初版第1刷発行 初出:「トヨダニュース 第六号」    1936(昭和11)年8月25日 入力:sogo 校正:塚本由紀
■ 漢字の説明( Explanation of kanji ) 

ネン・とし・▲とせ
yearいやー

シャ・くるま
vehicleびーくる

ガイ・ゲ・▲ウイ・そとほかはずす・はずれる・▲
outsideあうとさいど

ドウ・▲トウ・うごく・うごかす・▲ややもすれば
moveむーぶdynamicだいなみっく

アン・やすい・▲やすんじる・▲いずくんぞ
cheapちーぷ

サン・む・まれる・㋙うぶ
productionぷろだくしょんgiveぎぶ birthばーす

リョウ・い・▲やや
goodぐっどgoodnessぐっどねす

セイ・▲つく
madeめーど

チ・▲チョク・・㊥あたい・▲
valueばりゅーsizeさいずpriceぷらいすcostこすと

ダン・▲タン・▲きざはし
stepすてっぷ
(付記,Note)
※ 最初の行は音訓読みを記載しています。カタカナは音読み、ひらがなルビは訓読みです。
※ ▲は常用外の読み方です。㊥は中学・㋙は高校で習う読み方です。漢検・漢字辞典の記載に準拠しています。
※ ▲ is a non-regular reading. ㊥ is the reading learned in junior high school and ㋙ is the reading learned in high school.
■ 漢字のリンク集/書き順&意味 , stroke order:Mojinavi , Another languages:Google , Bing
1小1 ❶MojnaviGoogleBing
2小1 ❶MojnaviGoogleBing
3小2 ❷MojnaviGoogleBing
4小3 ❸MojnaviGoogleBing
5小3 ❸MojnaviGoogleBing
6小4 ❹MojnaviGoogleBing
7小4 ❹MojnaviGoogleBing
8小5 ❺MojnaviGoogleBing
9小6 ❻MojnaviGoogleBing
10小6 ❻MojnaviGoogleBing
★★★ 各小説投稿サイトへのリンク集(各投稿サイトでも公開しています) ★★★
Q:青空文庫って、何ですか?
A:1997年に始まったボランティア活動で、誰にでもアクセスできる自由な電子本を、共有可能なものとして図書館のようにインターネット上に集めようとしております。現在は、日本国内で著作権保護期間の満了した作品を中心に、ボランティアのみなさんの力によって電子化作業を進めています。青空文庫はそういった電子化活動のための、またその成果物をアーカイヴしておくための場でもあり、そこからコピーされた本の集成や活用事例もまた〈青空文庫〉と呼ばれることがあります。
Q: What is Aozora Bunko?
A: The volunteer activities, which began in 1997, the free e-book that can be accessed by anyone in, we are going to gather on the Internet like a library as a thing that can be shared. Currently, we are proceeding with digitization work with the help of volunteers, focusing on works whose copyright protection period has expired in Japan. Aozora Bunko is a place for such digitization activities and for archiving the deliverables, and the collection and use cases of books copied from it are also sometimes called “Aozora Bunko”.
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