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※ 読よみ仮名がなで漢字『かんじ』（『かんじ』）の様ように括弧かっこの付ついた漢字かんじは原書げんしょで読よみ仮名がなが付ついている漢字かんじです。

作品さくひん名めい：西洋せいようにはない
著者ちょしゃ名めい：夏目なつめ漱石そうせき

　❻諧はいかいの趣❸しゅみですか、西❸せいようには有ありませんな。川柳せんりゅうといふゆうやうなものは西❸せいようの❸しの❶なかにもありますが、❻❺はいく趣❸しゅみのものは❸しの❶なかにもないし、又またそれが❸しの本質ほんしつを形かたち作づくつても居いない。日本にほん獨特どくとくと言いつていゝいでせう。
　一體いったい日本にほんと西❸せいようとは家屋かおくの建築けんちく裝飾そうしょくなぞからして違ちがつて居いるので、日本にほんでは短冊たんざくのやうな小ちいさなものを掛かけて❹おいても一ひとつの裝飾そうしょくになるが、西❸せいようのやうな大おおきな構造こうぞうではあんな小『ちひ』ぽけなものを❹おいても一向いっこう目めに立たたない。
　❻❺はいくに進歩しんぽはないでせう、唯ただ變化へんかするだけでせう。イクラ複雜ふくざつにしたつて勸工場くわんこうばのやうにゴタ／＼ごた並ならべたてたつて仕樣しようがない。日本にほんの衣服いふくが❻❹かんべんである如ごとく、日本にほんの家屋かおくが❻❹かんべんである如ごとく、❻❺はいくも亦また❻❹かんべんなものである。
　―明治めいじ❶四よんじゅうよねん、六ろくがつ、一ついたち『❻❸はいみ』―