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第19話 不思議な機構・坂口安吾(新字新仮名)


伏字ふせじ漢字かんじ

いちからろく小1しょういちから小6しょうろくなな中学ちゅうがくおぼえる常用じょうよう漢字かんじです。
小1,❶: 金
小2,❷: 万 , 当 , 画
小4,❹: 不 , 信 , 機 , 議
小5,❺: 構
小6,❻: 映

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仮名がな漢字『かんじ』(『かんじ』)のよう括弧かっこいた漢字かんじ原書げんしょ仮名がないている漢字かんじです。


作品さくひんめい不思議ふしぎ機構きこう
著者ちょしゃめい坂口さかぐち安吾あんご

馬車ばしゃ物語ものがたり」(しん東宝とうほう)の撮影さつえいに、伊豆いずへロケーションにったことを徳川とくがわ夢声むせい随筆ずいひついている。日夜にちや酒宴しゅえんである。たまに撮影さつえいがある。夕方ゆうがた五時ごじになると、お時間じかんです、とピタリとやめる。むかしから❻❷えいがかいには、時間じかんかねをかければ作品さくひんができる、と迷❹めいしんがあったようだ。チャップリンが何々なになに三年さんねんもかかった、百❷ひゃくまんドル❻❷えいがだ、そういうことが宣伝せんでん文句もんくだけにとどまらず、日本にほん❻❷人えいがじん本❷ほんとう❹仰しんこうしている。
 芸術家げいじゅつかまぐれなどと気質かたぎは、称賛しょうさんすべき気質かたぎじゃない。三年さんねんかかったものを三ヵ月さんかげつでやれるなら、三ヵ月さんかげつほうがよい。
 いわんやロケーションにでて日夜にちや飲食いんしょくにふけり、まれにしか撮影さつえいをやらず、やったとおもえば、お時間じかんです、とくる。こんなふうかね時間じかんついやすことが如何いかにフザケタものであるか、あきらかなことである。すべて仕事しごとは、それが芸術げいじゅつであっても、能率的のうりつてきでなければならぬ。
 一東宝いちとうほうにとどまらず、日本にほん❻❷えいが製作せいさく❹❺きこうにはおおくのムダがあり、迷❹めいしんがあり、しかもそれが❻❷人えいがじんにはほとんど反省はんせいされておらない。この旧来きゅうらいのマカ❹思❹ふしぎ❹❺きこうたいする改革かいかくうことなれば❷然とうぜんなこととわたしおもう。
 一本いっぽん❻❷えいがをつくるに平均へいきん千三百❷せんさんびゃくまんえんかかる。しかしアガリは平均へいきん八百❷はっぴゃくまんしかない。だから八百❷はっぴゃくまんえん以内いない製作せいさくしなければならぬ。はなし至極しごく明快めいかいである。
 従来じゅうらいのヤリかたでは、かね時間じかんがかかりすぎる。演出家えんしゅつか俳優はいゆう脚本家きゃくほんかたちが、どうしてそこにがつかないのか、わたしには❹思❹ふしぎだ。組合くみあいひとたちも、どうしてそこにがつかないのか。
 公平こうへいて、会社かいしゃがわのいいぶんには、たしかにもっとも千❷せんばんのところがある。その❷然とうぜんなことに組合くみあいがわ正❷せいとう認識にんしきをもつべきだとわたしおもう。むしろ両者りょうしゃ協力きょうりょくして❻❷えいがかい従来じゅうらいのあやまれる❹❺きこう❷然とうぜん改革かいかくあたるべきだとわたしおもう。

コンテンツこんてんつ 


作品さくひんめい不思議ふしぎ機構きこう
著者ちょしゃめい坂口さかぐち安吾あんご

馬車ばしゃ物語ものがたり」(しん東宝とうほう)の撮影さつえいに、伊豆いずロケーションろけーしょんったことを徳川とくがわ夢声むせい随筆ずいひついている。日夜にちや酒宴しゅえんである。たまに撮影さつえいがある。夕方ゆうがた五時ごじになると、お時間じかんです、とピタリぴたりとやめる。むかしから映画えいがかいには、時間じかんかねをかければ作品さくひんができる、と迷信めいしんがあったようだ。チャップリンちゃっぷりん何々なになに三年さんねんもかかった、百万ひゃくまんドルどる映画えいがだ、そういうことが宣伝せんでん文句もんくだけにとどまらず、日本にほん映画人えいがじん本当ほんとう信仰しんこうしている。
 芸術家げいじゅつかまぐれなどと気質かたぎは、称賛しょうさんすべき気質かたぎじゃない。三年さんねんかかったものを三ヵ月さんかげつでやれるなら、三ヵ月さんかげつほうがよい。
 いわんやロケーションろけーしょんにでて日夜にちや飲食いんしょくにふけり、まれにしか撮影さつえいをやらず、やったとおもえば、お時間じかんです、とくる。こんなふうかね時間じかんついやすことが如何いかフザケタふざけたものであるか、あきらかなことである。すべて仕事しごとは、それが芸術げいじゅつであっても、能率的のうりつてきでなければならぬ。
 一東宝いちとうほうにとどまらず、日本にほん映画えいが製作せいさく機構きこうにはおおくのムダむだがあり、迷信めいしんがあり、しかもそれが映画人えいがじんにはほとんど反省はんせいされておらない。この旧来きゅうらいマカまか不思議ふしぎ機構きこうたいする改革かいかくうことなれば当然とうぜんなこととわたしおもう。
 一本いっぽん映画えいがをつくるに平均へいきん千三百万せんさんびゃくまんえんかかる。しかアガリあがり平均へいきん八百万はっぴゃくまんしかない。だから八百万はっぴゃくまんえん以内いない製作せいさくしなければならぬ。はなし至極しごく明快めいかいである。
 従来じゅうらいヤリやりかたでは、かね時間じかんがかかりすぎる。演出家えんしゅつか俳優はいゆう脚本家きゃくほんかたちが、どうしてそこにがつかないのか、わたしには不思議ふしぎだ。組合くみあいひとたちも、どうしてそこにがつかないのか。
 公平こうへいて、会社かいしゃがわのいいぶんには、たしかにもっとも千万せんばんのところがある。その当然とうぜんなことに組合くみあいがわ正当せいとう認識にんしきをもつべきだとわたしおもう。むしろ両者りょうしゃ協力きょうりょくして映画えいがかい従来じゅうらいのあやまれる機構きこう当然とうぜん改革かいかくあたるべきだとわたしおもう。

■ 原書情報(青空文庫) 図書カード:No.42836(新字新仮名) https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/card42836.html https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/42836_27738.html 底本:「坂口安吾全集 06」筑摩書房    1998(平成10)年7月20日初版第1刷発行 底本の親本:「毎日新聞 第二五八二〇号」    1948(昭和23)年5月3日 初出:「毎日新聞 第二五八二〇号」    1948(昭和23)年5月3日 入力:tatsuki 校正:小林繁雄
■ 漢字の説明( Explanation of kanji ) 

キン・コン・かねかな・▲こがね
metalめたる

マン・㊥バン・▲よろず
tenてん thousandさうざんど

トウ・たる・てる・▲まさ
hitひっと

ガ・カク・▲・▲えがく・▲く・▲かぎる・▲はか
pictureぴくちゃー

フ・ブ・▲
notのっとnegativeねがてぃぶ

シン・▲まことまかせる・たよ
trustとらすとfaithふぇーすtruthとぅるーす

キ・㊥はた・▲からくり・▲きざし・▲はずみ・▲おり
machineましーん

ギ・▲はか
discussionでぃすかっしょんdeliberationでりべれーしょん

コウ・かまえる・かま
structureすとらくちゃ

エイ・うつる・うつす・える中・▲やす
projectionぷろじぇくしょん
(付記,Note)
※ 最初の行は音訓読みを記載しています。カタカナは音読み、ひらがなルビは訓読みです。
※ ▲は常用外の読み方です。㊥は中学・㋙は高校で習う読み方です。漢検・漢字辞典の記載に準拠しています。
※ ▲ is a non-regular reading. ㊥ is the reading learned in junior high school and ㋙ is the reading learned in high school.
■ 漢字のリンク集/書き順&意味 , stroke order:Mojinavi , Another languages:Google , Bing
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★★★ 各小説投稿サイトへのリンク集(各投稿サイトでも公開しています) ★★★
Q:青空文庫って、何ですか?
A:1997年に始まったボランティア活動で、誰にでもアクセスできる自由な電子本を、共有可能なものとして図書館のようにインターネット上に集めようとしております。現在は、日本国内で著作権保護期間の満了した作品を中心に、ボランティアのみなさんの力によって電子化作業を進めています。青空文庫はそういった電子化活動のための、またその成果物をアーカイヴしておくための場でもあり、そこからコピーされた本の集成や活用事例もまた〈青空文庫〉と呼ばれることがあります。
Q: What is Aozora Bunko?
A: The volunteer activities, which began in 1997, the free e-book that can be accessed by anyone in, we are going to gather on the Internet like a library as a thing that can be shared. Currently, we are proceeding with digitization work with the help of volunteers, focusing on works whose copyright protection period has expired in Japan. Aozora Bunko is a place for such digitization activities and for archiving the deliverables, and the collection and use cases of books copied from it are also sometimes called “Aozora Bunko”.
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