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第24-1話 乗用車発表に際して・豊田喜一郎(旧字旧仮名)


伏字ふせじ漢字かんじ

いちからろく小1しょういちから小6しょうろくなな中学ちゅうがくおぼえる常用じょうよう漢字かんじです。
小1,❶: 先
小3,❸: 定 , 表
小4,❹: 選
小5,❺: 常
中学,❼: 了 , 充 , 敷 , 是 , 頃

学習がくしゅうコンテンツ 

仮名がな漢字『かんじ』(『かんじ』)のよう括弧かっこいた漢字かんじ原書げんしょ仮名がないている漢字かんじです。


乘用車じょうようしゃ發❸はっぴょうさいして
――豐田とよだ❺務じょうむのメツセージ――
豊田とよだ喜一郎きいちろう

 トヨダ乘用車じょうようしゃ發❸はっぴょうすで五月ごがつごろから屡々しばしばうわさあがかく方面ほうめんから非❺ひじょう期待きたいもっられてたがそのあと愛知あいちけん刈谷かりや同工場どうこうじょうではボデーの製作せいさく順調じゅんちょうすす❶月せんげつ六月ろくがつ中旬ちゅうじゅんしん組立くみたて工場こうじょう完成かんせい移轉いてんとして愈々いよいよ生産せいさん能力のうりょく擴❼かくじゅうされた。また一方いっぽう乘用車じょうようしゃ發❸はっぴょう遲延ちえん一因いちいんとされてたボデーよう大型おおがた鐵板てっぱんもこのほど多量たりょう輸入ゆにゅうりょうしたので愈々いよいよ八月はちがつ十五じゅうごにちして名古屋なごやおい乘用車じょうようしゃ發❸はっぴょうおこなふことに決❸けっていした。な東京とうきょう大阪おおさかりょう發❸はっぴょう大體だいたい九月くがつ早々そうそうとなる模樣もようである。
 乘用車じょうようしゃ發❸はっぴょうさい豐田とよだ❺務じょうむひだりごとかたつた。


 トヨダ乘用車じょうようしゃたいしてはかく方面ほうめんから非❺ひじょう御期待ごきたいたまつてりましたところ發❸はっぴょうがかくもおくれたこともうしわけない次第しだいであります。
 さて愈々いよいよ十五じゅうごにちして名古屋なごや發❸はっぴょうすることいたしましたが東京とうきょう大阪おおさかなど各地かくち九月くがつ早々そうそうおこなひたいとおもつてます。いま豫❸よていでは九月くがつ一日ついたち發❸はっぴょうえらびたいとおもつてます。あたか三年さんねんまえわたくし縁戚えんせき關係かんけいあた園田そのだ男爵だんしゃく法要ほうようがあつて東京とうきょう會館かいかんおいわたくしほう社長しゃちょうとも同席どうせきしたがときはじめて社長しゃちょう多年たねん抱負ほうふであつた自動車じどうしゃ製造せいぞう事業じぎょう計畫けいかく打明うちあ賛同さんどうたのでありました。か次第しだい九月くがつ一日ついたちトヨダ自動車じどうしゃ誕生たんじょうともいふ相當そうとうするわけで❼非ぜひこの發❸はっぴょうしたいとおもつてます。
 さらかんがへますと同日どうじつ關東かんとう大震災だいしんさい記念きねんでもあり國民こくみん一般いっぱん嚴肅げんしゅく氣分きぶんひたでもあるのでこのおいわがくに最初さいしょ經濟けいざい大衆車たいしゅうしゃ大市場だいしじょうおくこと何等なんらかの意味いみあることおもつてます。

      率❶そっせん輸入ゆにゅうして流線りゅうせんけい研究けんきゅう
      ――❺務じょうむ回顧談かいこだん

 乘用車じょうようしゃかた❹❸せんてい自動車じどうしゃ製造せいぞう會社がいしゃとしてもっと愼重しんちょうかんがへなくてはならないことでありこれ理窟りくつのみでは決❸けっていするわけかず、美術的びじゅつてき方面ほうめんからもかんがへ、また世間せけん潮流ちょうりゅうにもしたがつてかねばならぬてんもある。たとへば米國べいこくおいてはかた❹❸せんてい如何いか非❺ひじょうとしくるまうれゆき影響えいきょうする。一度いちどモデルの❹❸せんていあやまらんか自動車じどうしゃ會社がいしゃとして破産はさん憂目うきめさへ場合ばあいすらあるとはれている。


 ある外人がいじんこれをスペキユレーシヨンとまで極言きょくげんしてるのでも、かた❹❸せんていふものは六ヶむつかいとふことはあきらかである。スペキユレーシヨンとかたけてしまのもうかとおもふがかく夫程それほどかた❹❸せんていいふゆうものは六ツ❼むつかしいといふゆうことあきらかである。
 アメリカあたr實例じつれいてもひとつのかた❹❸せんていし、それ實際じっさいつくられるまでには二年にねん三年さんねんはかるらしい。つま世間せけん潮流ちょうりゅうがそれだけさきおこなつて變化へんかするかといふゆうようことまで豫想よそうしてかからねばならぬ。
 わたくしかた❹❸せんていにかつた昭和しょうわ八年はちねん中❼なかごろ所謂いわゆる三三年さんさんねんがた時代じだいで、從來じゅうらいのものより大分だいぶん丸味まるみびてた。多年たねん頑張がんばつてたフオードも流石さすが流行りゅうこうにはてきがたく、これまたそうとう丸味まるみがかつたかたした。事情じじょうるとかた丸味まるみるといふゆうことだけはあきらかになつたが、それからあと如何いかよう變化へんかするかといふゆうこと疑問ぎもんであつた。
 しかるに丁度ちょうどそのころアメリカではフローラインとかストリームラインとか新型しんがたがボツ/\ぼつ出始ではじめ、それが將來しょうらい支配しはいするのではなからうかといふゆううわさつたはつてたので❼非ぜひそれを見度みたいとおもつてところ昭和しょうわ九年きゅうねん二月にがつだつたかはじめてこれ輸入ゆにゅうされた。

コンテンツこんてんつ 


乘用車じょうようしゃ發表はっぴょうさいして
――豐田とよだ常務じょうむメツセージめつせーじ――
豊田とよだ喜一郎きいちろう

 トヨダとよだ乘用車じょうようしゃ發表はっぴょうすで五月ごがつごろから屡々しばしばうわさあがかく方面ほうめんから非常ひじょう期待きたいもっられてたがそのあと愛知あいちけん刈谷かりや同工場どうこうじょうではボデーぼでー製作せいさく順調じゅんちょうすす先月せんげつ六月ろくがつ中旬ちゅうじゅんしん組立くみたて工場こうじょう完成かんせい移轉いてんとして愈々いよいよ生産せいさん能力のうりょく擴充かくじゅうされた。また一方いっぽう乘用車じょうようしゃ發表はっぴょう遲延ちえん一因いちいんとされてボデーぼでーよう大型おおがた鐵板てっぱんもこのほど多量たりょう輸入ゆにゅうりょうしたので愈々いよいよ八月はちがつ十五じゅうごにちして名古屋なごやおい乘用車じょうようしゃ發表はっぴょうおこなふことに決定けっていした。な東京とうきょう大阪おおさかりょう發表はっぴょう大體だいたい九月くがつ早々そうそうとなる模樣もようである。
 乘用車じょうようしゃ發表はっぴょうさい豐田とよだ常務じょうむひだりごとかたつた。


 トヨダとよだ乘用車じょうようしゃたいしてはかく方面ほうめんから非常ひじょう御期待ごきたいたまつてりましたところ發表はっぴょうがかくもおくれたこともうしわけない次第しだいであります。
 さて愈々いよいよ十五じゅうごにちして名古屋なごや發表はっぴょうすることいたしましたが東京とうきょう大阪おおさかなど各地かくち九月くがつ早々そうそうおこなひたいとおもつてます。いま豫定よていでは九月くがつ一日ついたち發表はっぴょうえらびたいとおもつてます。あたか三年さんねんまえわたくし縁戚えんせき關係かんけいあた園田そのだ男爵だんしゃく法要ほうようがあつて東京とうきょう會館かいかんおいわたくしほう社長しゃちょうとも同席どうせきしたがときはじめて社長しゃちょう多年たねん抱負ほうふであつた自動車じどうしゃ製造せいぞう事業じぎょう計畫けいかく打明うちあ賛同さんどうたのでありました。か次第しだい九月くがつ一日ついたちトヨダとよだ自動車じどうしゃ誕生たんじょうともいふ相當そうとうするわけで是非ぜひこの發表はっぴょうしたいとおもつてます。
 さらかんがへますと同日どうじつ關東かんとう大震災だいしんさい記念きねんでもあり國民こくみん一般いっぱん嚴肅げんしゅく氣分きぶんひたでもあるのでこのおいわがくに最初さいしょ經濟けいざい大衆車たいしゅうしゃ大市場だいしじょうおくこと何等なんらかの意味いみあることおもつてます。

      率先そっせん輸入ゆにゅうして流線りゅうせんけい研究けんきゅう
      ――常務じょうむ回顧談かいこだん

 乘用車じょうようしゃかた選定せんてい自動車じどうしゃ製造せいぞう會社がいしゃとしてもっと愼重しんちょうかんがへなくてはならないことでありこれ理窟りくつのみでは決定けっていするわけかず、美術的びじゅつてき方面ほうめんからもかんがへ、また世間せけん潮流ちょうりゅうにもしたがつてかねばならぬてんもある。たとへば米國べいこくおいてはかた選定せんてい如何いか非常ひじょうとしくるまうれゆき影響えいきょうする。一度いちどモデルもでる選定せんていあやまらんか自動車じどうしゃ會社がいしゃとして破産はさん憂目うきめさへ場合ばあいすらあるとはれている。


 ある外人がいじんこれスペキユすぺきゆレーシヨンれーしよんとまで極言きょくげんしてるのでも、かた選定せんていふものは六ヶむつかいとふことはあきらかである。スペキユすぺきゆレーシヨンれーしよんかたけてしまのもうかとおもふがかく夫程それほどかた選定せんていいふゆうものは六ツ敷むつかしいといふゆうことあきらかである。
 アメリカあめりかあたr實例じつれいてもひとつのかた選定せんていし、それ實際じっさいつくられるまでには二年にねん三年さんねんはかるらしい。つま世間せけん潮流ちょうりゅうがそれだけさきおこなつて變化へんかするかといふゆうようことまで豫想よそうしてかからねばならぬ。
 わたくしかた選定せんていにかつた昭和しょうわ八年はちねん中頃なかごろ所謂いわゆる三三年さんさんねんがた時代じだいで、從來じゅうらいのものより大分だいぶん丸味まるみびてた。多年たねん頑張がんばつてフオードふおーど流石さすが流行りゅうこうにはてきがたく、これまたそうとう丸味まるみがかつたかたした。事情じじょうるとかた丸味まるみるといふゆうことだけはあきらかになつたが、それからあと如何いかよう變化へんかするかといふゆうこと疑問ぎもんであつた。
 しかるに丁度ちょうどそのころアメリカあめりかではフローふろーラインらいんとかストリームすとりーむラインらいんとか新型しんがたボツぼつ/\ぼつ出始ではじめ、それが將來しょうらい支配しはいするのではなからうかといふゆううわさつたはつてたので是非ぜひそれを見度みたいとおもつてところ昭和しょうわ九年きゅうねん二月にがつだつたかはじめてこれ輸入ゆにゅうされた。

■ 原書情報(青空文庫) 図書カード:No.53533(旧字旧仮名) https://www.aozora.gr.jp/cards/001362/card53533.html https://www.aozora.gr.jp/cards/001362/files/53533_56476.html 底本:「豊田喜一郎文書集成」名古屋大学出版会    1999(平成11)年4月15日初版第1刷発行 初出:「トヨダニュース 第四号」    1936(昭和11)年7月20日 入力:sogo 校正:塚本由紀
■ 漢字の説明( Explanation of kanji ) 

セン・さき・▲まず
aheadあへっど

テイ・ジョウ・さだめる・さだまる・㋙さだか・▲まる
immovableいむーばぶる

ヒョウ・おもてあらわす・あらわれる・▲しるし
frontふろんと faceふぇいすchartちゃーと

セン・えらぶ・▲る・▲る・▲すぐ
selectionせれくしょん

ジョウ・つね・㋙とこ
alwaysおーるうぇいずeverえばー

リョウ・▲わる・▲しまう・▲さと
completionこんぷりーしょん

ジュウ・▲シュウ・㋙てる・▲ちる・▲たす・▲
enoughいなふ

㋙フ・
Japaneseじゃぱにーず matressまっとれすlayれい outあうと

ゼ・▲シ・▲これ・▲の・▲ただしい
righteousnessらいちぇあすねす

▲ケイ・▲キョウ・ころ・▲しばらく・▲かたあし
occasionおけーじょん
(付記,Note)
※ 最初の行は音訓読みを記載しています。カタカナは音読み、ひらがなルビは訓読みです。
※ ▲は常用外の読み方です。㊥は中学・㋙は高校で習う読み方です。漢検・漢字辞典の記載に準拠しています。
※ ▲ is a non-regular reading. ㊥ is the reading learned in junior high school and ㋙ is the reading learned in high school.
■ 漢字のリンク集/書き順&意味 , stroke order:Mojinavi , Another languages:Google , Bing
1小1 ❶MojnaviGoogleBing
2小3 ❸MojnaviGoogleBing
3小3 ❸MojnaviGoogleBing
4小4 ❹MojnaviGoogleBing
5小5 ❺MojnaviGoogleBing
6中学 ❼MojnaviGoogleBing
7中学 ❼MojnaviGoogleBing
8中学 ❼MojnaviGoogleBing
9中学 ❼MojnaviGoogleBing
10中学 ❼MojnaviGoogleBing
★★★ 各小説投稿サイトへのリンク集(各投稿サイトでも公開しています) ★★★
Q:青空文庫って、何ですか?
A:1997年に始まったボランティア活動で、誰にでもアクセスできる自由な電子本を、共有可能なものとして図書館のようにインターネット上に集めようとしております。現在は、日本国内で著作権保護期間の満了した作品を中心に、ボランティアのみなさんの力によって電子化作業を進めています。青空文庫はそういった電子化活動のための、またその成果物をアーカイヴしておくための場でもあり、そこからコピーされた本の集成や活用事例もまた〈青空文庫〉と呼ばれることがあります。
Q: What is Aozora Bunko?
A: The volunteer activities, which began in 1997, the free e-book that can be accessed by anyone in, we are going to gather on the Internet like a library as a thing that can be shared. Currently, we are proceeding with digitization work with the help of volunteers, focusing on works whose copyright protection period has expired in Japan. Aozora Bunko is a place for such digitization activities and for archiving the deliverables, and the collection and use cases of books copied from it are also sometimes called “Aozora Bunko”.
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