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第48話 学規・会津八一(旧字旧仮名)


■ 伏字ふせじ漢字かんじ

※ ❶いち~から❻ろくは小1しょういち~から小6しょうろく、❼ななは中学ちゅうがくで覚おぼえる常用じょうよう漢字かんじです。
小1,❶: 口 , 石
小2,❷: 引
小5,❺: 規
中学,❼: 塚 , 壁 , 屈 , 床 , 抱 , 越

■ 学習がくしゅうコンテンツ  

※ 読よみ仮名がなで漢字『かんじ』(『かんじ』)の様ように括弧かっこの付ついた漢字かんじは原書げんしょで読よみ仮名がなが付ついている漢字かんじです。


作品さくひん名めい:學がく規き
著者ちょしゃ名めい:会津あいづ八一やいち

 古ふるい日記にっきや手紙てがみなどを、みんな燒やいてしまったので、こまかに時日じじつをいへないが、まだ若わかい中ちゅう學がく教師きょうしであった私わたくしが、牛込うしごめ下戸❼しもとづか町まちの素人しろうと下宿げしゅくから、小❶川こいしかわ豐川とよかわ町まちへ❷❼ひっこして、その時とき❼後えちごから出でて來きたばかりの三さん人にんの書生しょせいと初はじめて所しょ帶たいを持もったのは、たしか大正たいしょうのはじめであった。その時とき書生しょせいたちが机つくえを並ならべた八はち疊じょうの間まの❼とこの間まの❼かべに、私わたくしがその人ひとたちのために作つくった四よんか條じょうの學がく❺きといふゆうものを自筆じひつで書かいて貼はらせた。けれども受じゅ驗けん勉強べんきょうで夢中むちゅうになってゐいる書生しょせいたちは、誰だれ一人ひとりとしてそんな文句もんくに目めをくれるものもなく、どれほど窮❼きゅうくつな氣き持もちで、これをうとましく思おもったものもなかった。けっきよくこの學❺がくきは、私わたくし自身じしんのために私わたくしが作つくって、書かいて、そして自分じぶんを警いましめるだけのものになってしまった。それから四十よんじゅう年ねんにも近ちかく、今いまの老境ろうきょうにはいっても、いつも親したしくなつかしい氣持きもちでこの四よんか條じょうが思おもひ出だされる。
 私わたくしはもとから理想りそうとか、主義しゅぎとか、❼負ほうふとかいふゆうやうなものがあるのか、ないのか、自分じぶんにもはっきりしないが、とにかくそんなことを大おおッぴらに❶くちを出だしていひい立たてるのを好すかない。そのせいか、私わたくしの學がく❺きも昔むかしからあるものとはだいぶ樣よう子すがちがふやうだ。これくらゐいのところを目安めやすにしてかかるなら、長ながい一生いっしょうの末すえまでには、いくらか實行じっこうが出で來きるのではあるまいか。

    秋しゅん艸そう堂どう學がく❺き
 一ひとつ ふかくこの生せいを愛あいすべし
 一ひとつ かへりみて己おのれを知しるべし
 一ひとつ 學がく藝げいを以もって性せいを養やしなふべし
 一ひとつ 日々ひび新面目しんめんもくあるべし

                以上いじょう

■ コンテンツこんてんつ  


作品さくひん名めい:學がく規き
著者ちょしゃ名めい:会津あいづ八一やいち

 古ふるい日記にっきや手紙てがみなどを、みんな燒やいてしまったので、こまかに時日じじつをいへないが、まだ若わかい中ちゅう學がく教師きょうしであった私わたくしが、牛込うしごめ下戸塚しもとづか町まちの素人しろうと下宿げしゅくから、小石川こいしかわ豐川とよかわ町まちへ引越ひっこして、その時とき越後えちごから出でて來きたばかりの三さん人にんの書生しょせいと初はじめて所しょ帶たいを持もったのは、たしか大正たいしょうのはじめであった。その時とき書生しょせいたちが机つくえを並ならべた八はち疊じょうの間まの床とこの間まの壁かべに、私わたくしがその人ひとたちのために作つくった四よんか條じょうの學がく規きといふゆうものを自筆じひつで書かいて貼はらせた。けれども受じゅ驗けん勉強べんきょうで夢中むちゅうになってゐいる書生しょせいたちは、誰だれ一人ひとりとしてそんな文句もんくに目めをくれるものもなく、どれほど窮屈きゅうくつな氣き持もちで、これをうとましく思おもったものもなかった。けっきよくこの學規がくきは、私わたくし自身じしんのために私わたくしが作つくって、書かいて、そして自分じぶんを警いましめるだけのものになってしまった。それから四十よんじゅう年ねんにも近ちかく、今いまの老境ろうきょうにはいっても、いつも親したしくなつかしい氣持きもちでこの四よんか條じょうが思おもひ出だされる。
 私わたくしはもとから理想りそうとか、主義しゅぎとか、抱負ほうふとかいふゆうやうなものがあるのか、ないのか、自分じぶんにもはっきりしないが、とにかくそんなことを大おおッっぴらに口くちを出だしていひい立たてるのを好すかない。そのせいか、私わたくしの學がく規きも昔むかしからあるものとはだいぶ樣よう子すがちがふやうだ。これくらゐいのところを目安めやすにしてかかるなら、長ながい一生いっしょうの末すえまでには、いくらか實行じっこうが出で來きるのではあるまいか。

    秋しゅん艸そう堂どう學がく規き
 一ひとつ ふかくこの生せいを愛あいすべし
 一ひとつ かへりみて己おのれを知しるべし
 一ひとつ 學がく藝げいを以もって性せいを養やしなふべし
 一ひとつ 日々ひび新面目しんめんもくあるべし

                以上いじょう

■ 原書情報(青空文庫) 図書カード:No.57976(旧字旧仮名) https://www.aozora.gr.jp/cards/001245/card57976.html https://www.aozora.gr.jp/cards/001245/files/57976_61955.html 底本:「會津八一全集 第七卷」中央公論社    1982(昭和57)年4月25日初版発行 ※底本のテキストは、著者自筆原稿によります。 入力:フクポー 校正:鴨川佳一郎
■ 漢字の説明( Explanation of kanji )  
❶
口
コウ・ク・口くち
mouthまうす
❶
石
セキ・シャク・㊥コク・▲ジャク・石いし
stoneすとーん
❷
引
イン・引ひく・引ひけ
pullぷる
❺
規
キ・▲規のり・▲規ただす
regulationsれぎゅれーしょん ,ruleるーる ,standardすたんだーど
❼
塚
▲チョウ,塚つか
moundまうんど ,hillひる
❼
壁
ヘキ・壁かべ・▲壁がけ
wallうぉーる ,pariesぺありーず
❼
屈
クツ・▲屈かがむ・▲屈くぐまる・▲屈こごまる
stoopすとぅーぷ ,bendべんど forwardふぉわーど ,bendingべんでぃんぐ
❼
床
ショウ・床とこ・床ゆか
floorふろあー ,bedべっど ,alcoveあるこーぶ
❼
抱
ホウ・抱だく・抱いだく・抱かかえる
hugはぐ ,cherishちぇりしゅ ,embraceえんぷれす
❼
越
エツ・▲オチ・▲オツ・越こす・越こえる・▲越こし
passぱす overおーばー
(付記,Note)
※ 最初の行は音訓読みを記載しています。カタカナは音読み、ひらがなルビは訓読みです。
※ ▲は常用外の読み方です。㊥は中学・㋙は高校で習う読み方です。漢検・漢字辞典の記載に準拠しています。
※ ▲ is a non-regular reading. ㊥ is the reading learned in junior high school and ㋙ is the reading learned in high school.
■ 漢字のリンク集/書き順&意味 , stroke order:Mojinavi , Another languages:Google , Bing
1小1 ❶口MojnaviGoogleBing
2小1 ❶石MojnaviGoogleBing
3小2 ❷引MojnaviGoogleBing
4小5 ❺規MojnaviGoogleBing
5中学 ❼塚MojnaviGoogleBing
6中学 ❼壁MojnaviGoogleBing
7中学 ❼屈MojnaviGoogleBing
8中学 ❼床MojnaviGoogleBing
9中学 ❼抱MojnaviGoogleBing
10中学 ❼越MojnaviGoogleBing
★★★ 各小説投稿サイトへのリンク集(各投稿サイトでも公開しています) ★★★
Q:青空文庫って、何ですか?
A:1997年に始まったボランティア活動で、誰にでもアクセスできる自由な電子本を、共有可能なものとして図書館のようにインターネット上に集めようとしております。現在は、日本国内で著作権保護期間の満了した作品を中心に、ボランティアのみなさんの力によって電子化作業を進めています。青空文庫はそういった電子化活動のための、またその成果物をアーカイヴしておくための場でもあり、そこからコピーされた本の集成や活用事例もまた〈青空文庫〉と呼ばれることがあります。
Q: What is Aozora Bunko?
A: The volunteer activities, which began in 1997, the free e-book that can be accessed by anyone in, we are going to gather on the Internet like a library as a thing that can be shared. Currently, we are proceeding with digitization work with the help of volunteers, focusing on works whose copyright protection period has expired in Japan. Aozora Bunko is a place for such digitization activities and for archiving the deliverables, and the collection and use cases of books copied from it are also sometimes called “Aozora Bunko”.
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