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※ 読よみ仮名がなで漢字『かんじ』（『かんじ』）の様ように括弧かっこの付ついた漢字かんじは原書げんしょで読よみ仮名がなが付ついている漢字かんじです。

作品さくひん名めい：寒林かんりん小しょう唱しょう
著者ちょしゃ名めい：三好みよし達治たつじ

山雀やまがらの嘴『はし』をたたきし板いたびさし
はたやくだりし黄きなる❼❼かれしば

裸木はだかぎの朴『ほほ』のこずゑえはゆれてあれ
その青空あおぞらをとぶ雲くももなし

鴉からすなく櫟くぬぎばやしのあらきみち
けうとかりけり❸ひはてれれども

さねさし相模さがみの山やまよ來くる小鳥ことり
たかき空そらよりまひくだりけり

はらはらと空そらよりくだる小鳥ことりあり
やがてかしこにしばなきにけり

この❸にわは鶲『ひたき』のとりの一羽いちわきて
あそぶ❸にわなりひるをひねもす

❼よいながら❼おこたりてふすかり臥ふしの
山やまのしじまのきはまりもなし

むらぎものこころいこはずいくとし月つき
すぎこしはてのこの疲つかれかも

おほよそは古ふるきうれひも忘わすれらへし
旅たび寢ねごころや山やまの端はしに臥ふす

晝ひるの間あいだは鶲ひたきのとりのきてなきし
❶はやしのおくにわがひとり臥ふす

峽はざまをゆく柝『たく』の音おとあはれ艸くさまくら
❶はやしの奧おくに臥ふすもあはれや

一山ひとやまをゆるがしすぐる風かぜのこゑえ
しましはやがてひそまりにけり

風かぜの日ひは鶲ひたきのとりも來きてなかぬ
❶はやしの宿やどのおちゐいなやあな

遠とおとほに大砲『おほづつ』の音おとすなりけり
鵯ひよどりのむれものの實みをはむ

❶❸ゆうひ落おちつ冬木ふゆきのなかの朴ほおの木きに
鵙『もず』のしまらくゐいてもだしたり

冬木立ふゆこだちひとまはりして周章しゅうしょうと
啼なきてさりける椋むくのとりはや

❼❼かれしばのかのふる❼子いすに今❼こよいまた
下くだりたちにける黒鶫『くろつぐみ』どり

❶ゆう❸にわに❼ば娑さとくだりし鳥どりかげの
やがてひそけし塒ねぐらとむらん


　　母ははひとりはるばるとふるさとより僑きょう居きょを
　　訪おとずれなひたまふ乃すなわち一日いちにち鎌倉かまくらに遊あそぶ


母ははとして長谷はせ觀音かんのんのおみ足あしに
ロウソク獻けんず冬ふゆの日ひの暮くれ

るしやな彿ふつ露座ろざにておはすおん前まえに
腰こしくぐもれる母ははのあゆます


　　また一日いちにちさる出湯いでゆにて


ざんぎりの髮かみを洗あらいはせたまふなり
ははそはのははの老おいたまひけり