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ルビ付きテキスト

第50話 私の果樹園・三木清(新字新仮名)


■ 伏字ふせじ漢字かんじ

※ ❶いち~から❻ろくは小1しょういち~から小6しょうろく、❼ななは中学ちゅうがくで覚おぼえる常用じょうよう漢字かんじです。
小2,❷: 園
小3,❸: 仕
小5,❺: 豊
小6,❻: 樹
中学,❼: 伸 , 叫 , 堪 , 尋 , 彫 , 魂

■ 学習がくしゅうコンテンツ  

※ 読よみ仮名がなで漢字『かんじ』(『かんじ』)の様ように括弧かっこの付ついた漢字かんじは原書げんしょで読よみ仮名がなが付ついている漢字かんじです。


作品さくひん名めい:私わたしの果樹かじゅ園えん
著者ちょしゃ名めい:三木みき清きよし

❺ゆたかな果❻かじゅ❷えんをつくるのは
貴たっとい❼たましいにふさわしい❸事しごとだ。
それは孕はらめる羊ひつじが産うまぬ間『ま』に
草原そうげんから草原そうげんへさまよい歩あるく
遊牧ゆうぼくの民たみのことではない。
泣なき❼さけぶ声こえききながら日ひの落おちぬ間『ま』に
村むらから村むらを襲おそうて狂くるう
暴虐ぼうぎゃくな軍隊ぐんたいのことではない。
また次つぎの骰さいが投なげられぬ間『ま』に
町まちから町まちをかけめぐる
苛立『いらだた』しい都会人とかいじんのことでもない。
❺ゆたかな果❻かじゅ❷えんをつくるためには、
たましいの思慮しりょと優『やさ』しさと
❼たえ忍しのびと安やすけさとが必要ひつようだ。
それは天国てんごくを地上ちじょうへもちきたす
聖せいなる❼たましいにさえふさわしい❸事しごとだ。

私わたしも私わたしの果❻かじゅ❷えんをつくろう。
大おおきく拡ひろがり深ふかく根ねをはるドイツどいつ語ごで
しっかりと❼のびた果❻かじゅをつくり、
美うつくしさと味あじとに富とんだギリシアぎりしあ語ごで
❼刻ちょうこく的てきで生気せいきある実みを結むすばせよう。
賑にぎやかなイギリス語ごで草くさをはやし、
素樸そぼくなラテンらてん語ごで垣かきをめぐらそう。
アッシリア語ごで風かざ車ぐるまをつくるもいい。
さてあるときはイタリアいたりあ語ごで
暖あたたかいふくよかな風かぜをそよがせ、
またあるときはフランスふらんす語ごで
エスプリと香気こうきとの風かぜを吹ふかせよう。

して私わたしは籠『ざる』をさげ、斧おのをかつぎ、
鋏はさみをもち鎌かまをとって、
私わたしの果❻かじゅ❷えんへはいってゆこう。
ホメロスを探さがそう、ヴィルヂルを❼たずねよう。
ダンテ、ゲーテ、バイロン、ヴェルレーヌ。
聖せいなる言葉ことばと美うつくしい言葉ことばとを❼たずねよう。
しかし❺ゆたかな私わたしの果❻かじゅ❷えんでは、
愚おろかなる言葉ことばも醜みにくい言葉ことばも
みな一様いちように栄さかえ茂しげっているから、
私わたしのもとめる収穫しゅうかくはなかなか困難こんなんだ。

でも今年『ことし』の花はなはどこへ散ちったのであろう。
来くる年としの草くさの芽めはどこにもとめよう。
そして去年『こぞ』の雪ゆきはどこにたずねよう。
        (一九じゅうくねん・一二じゅうにがつ・二五にじゅうごにち)

■ コンテンツこんてんつ  


作品さくひん名めい:私わたしの果樹かじゅ園えん
著者ちょしゃ名めい:三木みき清きよし

豊ゆたかな果樹かじゅ園えんをつくるのは
貴たっとい魂たましいにふさわしい仕事しごとだ。
それは孕はらめる羊ひつじが産うまぬ間『ま』に
草原そうげんから草原そうげんへさまよい歩あるく
遊牧ゆうぼくの民たみのことではない。
泣なき叫さけぶ声こえききながら日ひの落おちぬ間『ま』に
村むらから村むらを襲おそうて狂くるう
暴虐ぼうぎゃくな軍隊ぐんたいのことではない。
また次つぎの骰さいが投なげられぬ間『ま』に
町まちから町まちをかけめぐる
苛立『いらだた』しい都会人とかいじんのことでもない。
豊ゆたかな果樹かじゅ園えんをつくるためには、
たましいの思慮しりょと優『やさ』しさと
堪たえ忍しのびと安やすけさとが必要ひつようだ。
それは天国てんごくを地上ちじょうへもちきたす
聖せいなる魂たましいにさえふさわしい仕事しごとだ。

私わたしも私わたしの果樹かじゅ園えんをつくろう。
大おおきく拡ひろがり深ふかく根ねをはるドイツどいつ語ごで
しっかりと伸のびた果樹かじゅをつくり、
美うつくしさと味あじとに富とんだギリシアぎりしあ語ごで
彫刻ちょうこく的てきで生気せいきある実みを結むすばせよう。
賑にぎやかなイギリスいぎりす語ごで草くさをはやし、
素樸そぼくなラテンらてん語ごで垣かきをめぐらそう。
アッシリアあっしりあ語ごで風かざ車ぐるまをつくるもいい。
さてあるときはイタリアいたりあ語ごで
暖あたたかいふくよかな風かぜをそよがせ、
またあるときはフランスふらんす語ごで
エスプリえすぷりと香気こうきとの風かぜを吹ふかせよう。

して私わたしは籠『ざる』をさげ、斧おのをかつぎ、
鋏はさみをもち鎌かまをとって、
私わたしの果樹かじゅ園えんへはいってゆこう。
ホメロスほめろすを探さがそう、ヴィルヂルゔぃるぢるを尋たずねよう。
ダンテだんて、ゲーテげーて、バイロンばいろん、ヴェルレーヌゔぇるれーぬ。
聖せいなる言葉ことばと美うつくしい言葉ことばとを尋たずねよう。
しかし豊ゆたかな私わたしの果樹かじゅ園えんでは、
愚おろかなる言葉ことばも醜みにくい言葉ことばも
みな一様いちように栄さかえ茂しげっているから、
私わたしのもとめる収穫しゅうかくはなかなか困難こんなんだ。

でも今年『ことし』の花はなはどこへ散ちったのであろう。
来くる年としの草くさの芽めはどこにもとめよう。
そして去年『こぞ』の雪ゆきはどこにたずねよう。
        (一九じゅうくねん・一二じゅうにがつ・二五にじゅうごにち)

■ 原書情報(青空文庫) 図書カード:No.46223(新字新仮名) https://www.aozora.gr.jp/cards/000218/card46223.html https://www.aozora.gr.jp/cards/000218/files/46223_25711.html 底本:「現代日本思想大系 33」筑摩書房    1966(昭和41)年5月30日初版発行    1975(昭和50)年5月30日初版第14刷 入力:文子 校正:川山隆
■ 漢字の説明( Explanation of kanji )  
❷
園
エン・▲オン・㊥園その・▲園にわ
gardenがーでん ,parkぱーく
❸
仕
シ・㋙ジ・仕つかえる・▲仕つかまつる
officialおふぃしゃる ,civilしびる serviceさーびす
❺
豊
ホウ・豊ゆたか・▲豊とよ
plentifulぷれんてぃふる ,abundantあばんだんと
❻
樹
ジュ・▲樹き・▲樹うえる・▲樹たてる
treeつりー ,arborあーばー ,woodうっど
❼
伸
シン・伸のびる・伸のばす・伸のべる・▲伸のす・▲伸のる
stretchすとれっち ,elongationいーろんげーしょん
❼
叫
キョウ・叫さけぶ
cryくらい ,yellいぇーる ,screamすくりーむ
❼
堪
㋙カン・▲タン・堪たえる・▲堪こらえる・▲堪こたえる・▲堪たまる
endureえんでゅあー
❼
尋
ジン・尋たずねる・▲尋つね・▲尋ひろ
inquireいんくわいあ ,askあすく
❼
彫
チョウ・彫ほる
carvingかーびんぐ
❼
魂
コン・魂たましい,g魂たま
soulそうる ,spiritすぴりっと ,ghostごーすと
(付記,Note)
※ 最初の行は音訓読みを記載しています。カタカナは音読み、ひらがなルビは訓読みです。
※ ▲は常用外の読み方です。㊥は中学・㋙は高校で習う読み方です。漢検・漢字辞典の記載に準拠しています。
※ ▲ is a non-regular reading. ㊥ is the reading learned in junior high school and ㋙ is the reading learned in high school.
■ 漢字のリンク集/書き順&意味 , stroke order:Mojinavi , Another languages:Google , Bing
1小2 ❷園MojnaviGoogleBing
2小3 ❸仕MojnaviGoogleBing
3小5 ❺豊MojnaviGoogleBing
4小6 ❻樹MojnaviGoogleBing
5中学 ❼伸MojnaviGoogleBing
6中学 ❼叫MojnaviGoogleBing
7中学 ❼堪MojnaviGoogleBing
8中学 ❼尋MojnaviGoogleBing
9中学 ❼彫MojnaviGoogleBing
10中学 ❼魂MojnaviGoogleBing
★★★ 各小説投稿サイトへのリンク集(各投稿サイトでも公開しています) ★★★
Q:青空文庫って、何ですか?
A:1997年に始まったボランティア活動で、誰にでもアクセスできる自由な電子本を、共有可能なものとして図書館のようにインターネット上に集めようとしております。現在は、日本国内で著作権保護期間の満了した作品を中心に、ボランティアのみなさんの力によって電子化作業を進めています。青空文庫はそういった電子化活動のための、またその成果物をアーカイヴしておくための場でもあり、そこからコピーされた本の集成や活用事例もまた〈青空文庫〉と呼ばれることがあります。
Q: What is Aozora Bunko?
A: The volunteer activities, which began in 1997, the free e-book that can be accessed by anyone in, we are going to gather on the Internet like a library as a thing that can be shared. Currently, we are proceeding with digitization work with the help of volunteers, focusing on works whose copyright protection period has expired in Japan. Aozora Bunko is a place for such digitization activities and for archiving the deliverables, and the collection and use cases of books copied from it are also sometimes called “Aozora Bunko”.
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