Ago and New
ルビ付きテキスト

第53話 サガニー耕地より・上里春生(新字旧仮名)


■ 伏字ふせじ漢字かんじ

※ ❶いち~から❻ろくは小1しょういち~から小6しょうろく、❼ななは中学ちゅうがくで覚おぼえる常用じょうよう漢字かんじです。
小2,❷: 遠
小3,❸: 童
小6,❻: 呼 , 激
中学,❼: 刃 , 唇 , 寝 , 岬 , 響 , 黙

■ 学習がくしゅうコンテンツ  

※ 読よみ仮名がなで漢字『かんじ』(『かんじ』)の様ように括弧かっこの付ついた漢字かんじは原書げんしょで読よみ仮名がなが付ついている漢字かんじです。


作品さくひん名めい:サガニー耕地こうちより
著者ちょしゃ名めい:上里春生こうざとはるお


二に月がつ半なかばのそら、
酒室さかむろの❻吸こきゅうを罩こめて、風かぜ、
あまし、温あたたかし
円まろかなるこの穹ふかき
懐ふところろに、音おともなく
彩雲あやぐもぞ、さすらふなる。

機はたおる❷とおき麓ふもとのむら村むら、
ゆるくゆるく、筏いかだの昔むかし幽かすかに
声音こわねなし、幻まぼろしの静しずけさに、たえなる夢ゆめを織おれるか、
雲くもにそゝそぎ入はいる恍惚こうこつ、炊かしぐ煙けむりの
直なおしき細流さいりゅう、君きみよとく、来きたらずや、
この身みさみし。

水みず豊ゆたかに❷とおく連つがりて、
田たを限かぎる畔ほとり、唯ただ見みる目覚めさむ一色いっしょくに、
何なにをするぞ無言むごんの二人ふたり、
さても❼然もくねんとうづずくまりて、青光あおびかりの鎌かまの❼はに
さくさくと、草葉くさばの重おもき❼ねりの上うえ、
白蝋はくろうの手てに湧わくか緑葉みどりばは。
籠かごに緑児みどりごはねむり、すやすやと、
沈❼ちんもくの雫しずくを吸すふ。さくさくと実じつにさくさくと、
微かすかに愛いとしき囁ささやきの忍しのび寄よりて、
❸子どうじが朱❼しゅしんをゆすれば、声こえは❼ひびきを❻よび
❼ひびきは声こえを生うみ、❻はげしき感❻かんげきのきはみ、
天地てんち一心いっしんになりをひそむ。

純じゅんなる❸子どうじが節調せっちょうに、快こころよき眠ねむりぞ襲おそひ来きたりて、
魂たましいの蕩とろけ入はいるけはひなる。あゝあ気きは澄すみたり
固かたくななつぼみを秘ひめし我わが胸裡きょうり
ふるゝふる心こころは温あたたかし。
あはれやがて消きえなんとする、思おもひ出での果はて、
燻銀いぶしぎんの微光うすびかり澱よどめる、❷とおき❼みさきに夕陽ゆうひが赤あかし。

■ コンテンツこんてんつ  


作品さくひん名めい:サガニーさがにー耕地こうちより
著者ちょしゃ名めい:上里春生こうざとはるお

二に月がつ半なかばのそら、
酒室さかむろの呼吸こきゅうを罩こめて、風かぜ、
あまし、温あたたかし
円まろかなるこの穹ふかき
懐ふところろに、音おともなく
彩雲あやぐもぞ、さすらふなる。

機はたおる遠とおき麓ふもとのむら村むら、
ゆるくゆるく、筏いかだの昔むかし幽かすかに
声音こわねなし、幻まぼろしの静しずけさに、たえなる夢ゆめを織おれるか、
雲くもにそゝそぎ入はいる恍惚こうこつ、炊かしぐ煙けむりの
直なおしき細流さいりゅう、君きみよとく、来きたらずや、
この身みさみし。

水みず豊ゆたかに遠とおく連つがりて、
田たを限かぎる畔ほとり、唯ただ見みる目覚めさむ一色いっしょくに、
何なにをするぞ無言むごんの二人ふたり、
さても黙然もくねんとうづずくまりて、青光あおびかりの鎌かまの刃はに
さくさくと、草葉くさばの重おもき寝ねりの上うえ、
白蝋はくろうの手てに湧わくか緑葉みどりばは。
籠かごに緑児みどりごはねむり、すやすやと、
沈黙ちんもくの雫しずくを吸すふ。さくさくと実じつにさくさくと、
微かすかに愛いとしき囁ささやきの忍しのび寄よりて、
童子どうじが朱唇しゅしんをゆすれば、声こえは響ひびきを呼よび
響ひびきは声こえを生うみ、激はげしき感激かんげきのきはみ、
天地てんち一心いっしんになりをひそむ。

純じゅんなる童子どうじが節調せっちょうに、快こころよき眠ねむりぞ襲おそひ来きたりて、
魂たましいの蕩とろけ入はいるけはひなる。あゝあ気きは澄すみたり
固かたくななつぼみを秘ひめし我わが胸裡きょうり
ふるゝふる心こころは温あたたかし。
あはれやがて消きえなんとする、思おもひ出での果はて、
燻銀いぶしぎんの微光うすびかり澱よどめる、遠とおき岬みさきに夕陽ゆうひが赤あかし。

■ 原書情報(青空文庫) 図書カード:No.54406(新字旧仮名) https://www.aozora.gr.jp/cards/001663/card54406.html https://www.aozora.gr.jp/cards/001663/files/54406_68239.html 底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩Ⅰ」国書刊行会    1991(平成3)年6月6日第1刷 底本の親本:「文章世界 第12巻第4号」    1917(大正6)年4月1日発行 初出:「文章世界 第12巻第4号」    1917(大正6)年4月1日発行 ※初出時の署名は「上里無春」です。 入力:坂本真一 校正:hitsuji
■ 漢字の説明( Explanation of kanji )  
❷
遠
エン・㋙オン・遠とおい・▲遠おち
farふぁー ,distantでぃすたんと
❸
童
ドウ・▲トウ・㊥童わらべ・▲童わらわ
childちゃいるど
❻
呼
コ・呼よぶ
callこーる
❻
激
ゲキ・激はげしい・▲激はげます
extremelyえくすとりーむりー ,terrificallyてりふぃかりー ,superすーぱー
❼
刃
㋙ジン・▲ニン・刃は・▲刃やいば・▲刃きる
bladeぶれーど ,cutかっと
❼
唇
㋙シン・唇くちびる
lipsりっぷす
❼
寝
シン・寝ねる・寝ねかす・▲寝みたまや・▲寝やめる・▲寝みにくい
sleepすりーぷ
❼
岬
▲コウ・岬みさき
capeけーぷ ,promontoryぷろまんとりー
❼
響
キョウ・響ひびく
echoえこー ,soundさうんど ,reverberationりばーばれいしゃん
❼
黙
モク・▲ボク・黙だまる・▲黙だんまり・▲黙もだす
silenceさいれんす ,stillnessすてぃるねす ,mutenessみゅーとねす
(付記,Note)
※ 最初の行は音訓読みを記載しています。カタカナは音読み、ひらがなルビは訓読みです。
※ ▲は常用外の読み方です。㊥は中学・㋙は高校で習う読み方です。漢検・漢字辞典の記載に準拠しています。
※ ▲ is a non-regular reading. ㊥ is the reading learned in junior high school and ㋙ is the reading learned in high school.
■ 漢字のリンク集/書き順&意味 , stroke order:Mojinavi , Another languages:Google , Bing
1小2 ❷遠MojnaviGoogleBing
2小3 ❸童MojnaviGoogleBing
3小6 ❻呼MojnaviGoogleBing
4小6 ❻激MojnaviGoogleBing
5中学 ❼刃MojnaviGoogleBing
6中学 ❼唇MojnaviGoogleBing
7中学 ❼寝MojnaviGoogleBing
8中学 ❼岬MojnaviGoogleBing
9中学 ❼響MojnaviGoogleBing
10中学 ❼黙MojnaviGoogleBing
★★★ 各小説投稿サイトへのリンク集(各投稿サイトでも公開しています) ★★★
Q:青空文庫って、何ですか?
A:1997年に始まったボランティア活動で、誰にでもアクセスできる自由な電子本を、共有可能なものとして図書館のようにインターネット上に集めようとしております。現在は、日本国内で著作権保護期間の満了した作品を中心に、ボランティアのみなさんの力によって電子化作業を進めています。青空文庫はそういった電子化活動のための、またその成果物をアーカイヴしておくための場でもあり、そこからコピーされた本の集成や活用事例もまた〈青空文庫〉と呼ばれることがあります。
Q: What is Aozora Bunko?
A: The volunteer activities, which began in 1997, the free e-book that can be accessed by anyone in, we are going to gather on the Internet like a library as a thing that can be shared. Currently, we are proceeding with digitization work with the help of volunteers, focusing on works whose copyright protection period has expired in Japan. Aozora Bunko is a place for such digitization activities and for archiving the deliverables, and the collection and use cases of books copied from it are also sometimes called “Aozora Bunko”.
© 2020 agoandnew All rights reserved.