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ルビ付きテキスト

第62話 白菊・伊藤左千夫(新字新仮名)


伏字ふせじ漢字かんじ

いちからろく小1しょういちから小6しょうろくなな中学ちゅうがくおぼえる常用じょうよう漢字かんじです。
小3,❸: 予 , 急
小4,❹: 初 , 景
中学,❼: 威 , 岳 , 峰 , 抜 , 菊 , 霜

学習がくしゅうコンテンツ 

仮名がな漢字『かんじ』(『かんじ』)のよう括弧かっこいた漢字かんじ原書げんしょ仮名がないている漢字かんじです。


作品さくひんめい白菊しらぎく
著者ちょしゃめい伊藤いとう 左千夫さちお

 茅野ちの停車ていしゃじょうじゅう五十ごじゅぷんはつのぼりにうようにと、『いわお』温泉おんせんたのはあさしちであった。海❼かいばつやく四千よんせんしゃく以上いじょう山中さんちゅうはほとんど❹冬しょとう光❹こうけいである。岩角いわかどかくれた河岸『かし』紅葉こうようのこすくなく、千樫『ちがし』とふたりはしもふか岨路『そばみち』いそいだ。かえりみると温泉おんせん外湯そとゆけむり濛々『もうもう』のきつつんでたち『のぼ』ってる。暗黒あんこくだい巌石がんせきがいくつとなく聳立『しょうりつ』せるような、八ヶ❼やつがたけ一隅いちぐうから太陽たいよう一間いっけんはんばかりのぼってる。らふたりは❼柱しもばしら山路やまじを、はなしながらもいそいでくだるのである。木蘇『きそ』御嶽山『おんたけさん』が、その角々かどかどしきみね白雪しらゆき『いただ』いて、あおぎったそらうつくしい。ちかくは釜無かまなしやまそれにつらなる甲斐かい駒ヶ❼こまがたけなどいかにも深黒しんこく❼厳いげんある山容さんようである。
 らふたりはようやく一団いちだん草原そうげんぎて、『ふもと』見渡みわたしたときはじめて意外いがい光❹こうけい展望てんぼうした。
 諏訪すわ一郡いちぐん低地ていち白雲『はくうん』密塞『みっさい』して、あたかも白波『はくは』澎沛『ほうはい』たるだいすいであった。いそぎにいそらもしばらくは諦視『ていし』せざるをない。路傍ろぼういしによろよろと小白おしろばなはすなわちしもいためるやまぎくである。きょう白❼しらぎく貴人きじんかんじなれど、山路やまじ白❼しらぎく素朴そぼくにしてかえって気韻『きいん』たかい。白雲はくうんだい湖水こすい瞰下『みおろ』してこのやまぎくる。ふたりはやまるのがいやになった。

コンテンツこんてんつ 


作品さくひんめい白菊しらぎく
著者ちょしゃめい伊藤いとう 左千夫さちお

 茅野ちの停車ていしゃじょうじゅう五十ごじゅぷんはつのぼりにうようにと、『いわお』温泉おんせんたのはあさしちであった。海抜かいばつやく四千よんせんしゃく以上いじょう山中さんちゅうはほとんど初冬しょとう光景こうけいである。岩角いわかどかくれた河岸『かし』紅葉こうようのこすくなく、千樫『ちがし』とふたりはしもふか岨路『そばみち』いそいだ。かえりみると温泉おんせん外湯そとゆけむり濛々『もうもう』のきつつんでたち『のぼ』ってる。暗黒あんこくだい巌石がんせきがいくつとなく聳立『しょうりつ』せるような、八ヶ岳やつがたけ一隅いちぐうから太陽たいよう一間いっけんはんばかりのぼってる。らふたりは霜柱しもばしら山路やまじを、はなしながらもいそいでくだるのである。木蘇『きそ』御嶽山『おんたけさん』が、その角々かどかどしきみね白雪しらゆき『いただ』いて、あおぎったそらうつくしい。ちかくは釜無かまなしやまそれにつらなる甲斐かい駒ヶ岳こまがたけなどいかにも深黒しんこく威厳いげんある山容さんようである。
 らふたりはようやく一団いちだん草原そうげんぎて、『ふもと』見渡みわたしたときはじめて意外いがい光景こうけい展望てんぼうした。
 諏訪すわ一郡いちぐん低地ていち白雲『はくうん』密塞『みっさい』して、あたかも白波『はくは』澎沛『ほうはい』たるだいすいであった。いそぎにいそらもしばらくは諦視『ていし』せざるをない。路傍ろぼういしによろよろと小白おしろばなはすなわちしもいためるやまぎくである。きょう白菊しらぎく貴人きじんかんじなれど、山路やまじ白菊しらぎく素朴そぼくにしてかえって気韻『きいん』たかい。白雲はくうんだい湖水こすい瞰下『みおろ』してこのやまぎくる。ふたりはやまるのがいやになった。

■ 原書情報(青空文庫) 図書カード:No.57334(新字新仮名) https://www.aozora.gr.jp/cards/000058/card57334.html https://www.aozora.gr.jp/cards/000058/files/57334_71312.html 底本:「長野県文学全集 〔第Ⅱ期/随筆・紀行・日記編〕 第2巻 明治編〈Ⅱ〉」郷土出版社    1989(平成元)年11月18日発行 底本の親本:「左千夫全集 第二卷」岩波書店    1976(昭和51)年11月25日発行 初出:「國民新聞」國民新聞社    1908(明治41)年11月3日 ※誤植を疑った箇所を、底本の親本の表記にそって、あらためました。 ※初出時の署名は「左千夫」です。 入力:高瀬竜一 校正:きりんの手紙
■ 漢字の説明( Explanation of kanji ) 

ヨ・▲あらかじめ・▲かねて・▲われ・▲あたえる・▲ゆる
beforehandびふぉあはんど

キュウ・いそぐ・▲
suddenさどんsteepすてーぷ

ショ・▲ソ・はじめ・はじめて・はつ・㋙うい・㊥める・▲うぶ
firstふぁーすと timeたいむnewにゅー

ケイ・▲エイ
vistaびすたsceneryしーなりー

イ・▲おど
intimidateいんてぃまいど

ガク・たけ
peakぴーくmountainまうんてん

ホウ・▲フ・みね
peakぴーくridgeりっじ

バツ・く・ける・かす・かる
unpluggedあんぷらぐど

キク
mumむむchrysanthemumくりさんさまむ

㋙ソウ・しも
frostふろすとhoarfrostほーふらーすと
(付記,Note)
※ 最初の行は音訓読みを記載しています。カタカナは音読み、ひらがなルビは訓読みです。
※ ▲は常用外の読み方です。㊥は中学・㋙は高校で習う読み方です。漢検・漢字辞典の記載に準拠しています。
※ ▲ is a non-regular reading. ㊥ is the reading learned in junior high school and ㋙ is the reading learned in high school.
■ 漢字のリンク集/書き順&意味 , stroke order:Mojinavi , Another languages:Google , Bing
1小3 ❸MojnaviGoogleBing
2小3 ❸MojnaviGoogleBing
3小4 ❹MojnaviGoogleBing
4小4 ❹MojnaviGoogleBing
5中学 ❼MojnaviGoogleBing
6中学 ❼MojnaviGoogleBing
7中学 ❼MojnaviGoogleBing
8中学 ❼MojnaviGoogleBing
9中学 ❼MojnaviGoogleBing
10中学 ❼MojnaviGoogleBing
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Q:青空文庫って、何ですか?
A:1997年に始まったボランティア活動で、誰にでもアクセスできる自由な電子本を、共有可能なものとして図書館のようにインターネット上に集めようとしております。現在は、日本国内で著作権保護期間の満了した作品を中心に、ボランティアのみなさんの力によって電子化作業を進めています。青空文庫はそういった電子化活動のための、またその成果物をアーカイヴしておくための場でもあり、そこからコピーされた本の集成や活用事例もまた〈青空文庫〉と呼ばれることがあります。
Q: What is Aozora Bunko?
A: The volunteer activities, which began in 1997, the free e-book that can be accessed by anyone in, we are going to gather on the Internet like a library as a thing that can be shared. Currently, we are proceeding with digitization work with the help of volunteers, focusing on works whose copyright protection period has expired in Japan. Aozora Bunko is a place for such digitization activities and for archiving the deliverables, and the collection and use cases of books copied from it are also sometimes called “Aozora Bunko”.
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