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※ 読よみ仮名がなで漢字『かんじ』（『かんじ』）の様ように括弧かっこの付ついた漢字かんじは原書げんしょで読よみ仮名がなが付ついている漢字かんじです。
　 旧きゅう仮名かな遣づかいは新しん仮名かな遣づかいに変かえている場合ばあいもあります。

作品さくひん名めい：蘭らん郁いく二郎じろう❹しの処女しょじょ作さく
――「夢む鬼き」を読よみて――
大倉おおくら燁てる子こ

「探❼たんてい文学ぶんがく」誌上しじょうで発表はっぴょうされた時とき、非常ひじょうな好評こうひょうを博はくした蘭らん郁二郎いくじろう❹しの「夢む鬼き」がこの度たび上梓じょうしされた。私わたくしは早速さっそくまた❼くり返かえして読よんだ。いくたび読よんでも面白おもしろい。
　妖❼ようまの如ごとき美び少女しょうじょ葉子ようこと、醜みにくい❼鬱ゆううつな少年しょうねん黒くろ吉きちとの❸きょく馬ば団だんの楽屋がくや裏うらにおける生立おいたちから始はじまり、幼おさない二人ふたりはいつか互たがいに愛あいしあうようになる。葉子ようこにとっては❼たわむれのようなこの恋こいも、黒くろ吉きちにとっては実じつに❸いのちがけのものであったが、やがて移うつり気ぎな彼女かのじょに捨すてられる。恋こいに破やぶれた彼かれは彼女かのじょを遂ついに殺ころし、その死体したいを抱いだいて❹行機ひこうきから❹降とびおり心中しんじゅうをするといゆう終❼しゅうたんまで一気いっきに読よんでしまった。そしてその後あともなお妖あやしき興奮こうふんはなかなか冷さめなかった。黒くろ吉きち少年しょうねんが最もっとも得意とくいとするブランコからブランコに❹とびうつる❸芸きょくげいがある、その空そらを切きって懸❸けんめいに影かげを描えがき得えられたのではあるまいか。この点てんだけでも心霊しんれい学がくに造詣ぞうけいふかい方かただと想像そうぞうされる。「夢む鬼き」以下いか五いつつの短篇たんぺんを添そえてあるが、何いずれも興味きょうみふかく読よんだ。「歪ゆがんだ夢ゆめ」もやはり心霊しんれい小説しょうせつのような気きがした。この五ご篇へんの中なかでは「❼ま像ぞう」が一番いちばん面白おもしろかった。