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※ 読よみ仮名がなで漢字『かんじ』（『かんじ』）の様ように括弧かっこの付ついた漢字かんじは原書げんしょで読よみ仮名がなが付ついている漢字かんじです。
　 旧きゅう仮名かな遣づかいは新しん仮名かな遣づかいに変かえている場合ばあいもあります。

作品さくひん名めい：焔ほのおの后きさい
著者ちょしゃ名めい：末吉すえきち 安やす持じ

気きも遠とおく世よも消きえ／＼きえや
丑三うしみつの❶もりの❼おくの
白檀『びやくたん』ほのにくゆり
木薩地『こさぢ』しづき頃ごろほひ。
魑魅『すだま』が気き夢ゆめにふれて
孵『かへ』りし我『われ』かの心地ここち。
皐月闇『さつきやみ』霊気れいきばしる
夜半やはんの戸とに額『ぬか』を垂たれて
あゝあ堪こらへ難がたき胸むねの狂火『くるひゞ』。
雛ひなよばふ❹野やけのの雉子きぎしの

闇やみ睨にらむ眼めか　きらに
❺もえ飛とぶ野❶のびの遠❶とおびの
青火魂『あおひだま』――あなやの刹那せつな。
魄霊『なほしび』ゆらに揺ゆらぎつ
讃歌『さんか』咽喉『のみど』をあふれて
狂くるひ心地ごごち、小こ手❺てまねき、
いと深ふかき闇やみのをちに
認みとめ得えし小ちいさき焔『ほのほ』の后『きさい』。
五十年『いそぢ』のわが歌うたの世よを
上下『かみしも』の❺劫えいごうに
うるはしくも霊妙『いみじ』く。
不滅ふめつの光明『ひかり』の宮みやの
常虹『とこにじ』の御座『みくら』の上『へ』。
われ生命『いのち』の❶者おうじゃが
斎『いつ』かれむほのほの后『きさい』
❼もう火『くわ』の天衣『てんね』左手『ゆんで』に
着代『きかへ』をすゝすむる情『じやう』の素振『そぶり』よ。

この時とき白隼『しらはや』とびて
天『あめ』の世よに拍手『はで』打うつ音『ね』もす
くつがへれ今いまのこの世よ
我われこそは理想『おもひ』の宮みやに
ひとり笑えむ❶者おうじゃなるぞ。
焔えんそは❺もゆるもの
身みの膏『あぶら』しぼるものか。
あゝあ好よし、后『きさい』に参『まゐ』る。
❹やけても人世『じんせ』の外そとに活いくべし。