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第79話 初夏に座す・岡本かの子(新字旧仮名)


伏字ふせじ漢字かんじ

いちからろく小1しょういちから小6しょうろくなな中学ちゅうがくおぼえる常用じょうよう漢字かんじです。
小1,❶: 竹
小4,❹: 季 , 節
小6,❻: 座
中学,❼: 匂 , 宴 , 寛 , 尽 , 忙 , 触

学習がくしゅうコンテンツ 

仮名がな漢字『かんじ』(『かんじ』)のよう括弧かっこいた漢字かんじ原書げんしょ仮名がないている漢字かんじです。
  きゅう仮名かなづかいはしん仮名かなづかいにえている場合ばあいもあります。


作品さくひんめい初夏しょか
著者ちょしゃめい岡本おかもと かの

 人生じんせい甘酸かんさんあじけてるほど、❹❹きせつ有難ありがたわかってる。それは「花時はなどきたがへず」といった――❹❹きせつ人間にんげんよりてになるとい意味いみ警醒けいせいてき観念かんねんからでもあう。❹❹きせつかた多種たしゅ多様たよう一概いちがいにはりっしられないが、かた単純たんじゅん素朴そぼくなほど、❹❹きせつあじひとめるうである。

 このごろ❹❹きせつ長所ちょうしょあかるく、瑞々みずみずしく、さわやかなことである。たいがい憂愁ゆうしゅうも、しばしわすれさせてれる、じょうりょくじゅ重厚じゅうこうみどりのバツクにたいして鬱金うこんいろこないたうな灌木かんぼく新芽しんめ、あらゆるかたちの「てん」と、あらゆるかたちの「かたまり」とで清新せいしん希望きぼうくに構成こうせいする若葉わかばしげり、れどかず、ながむれどながつきせぬこころちがする。

 には晩春ばんしゅんさきへて、なおとろへをせないはな、すでに盛夏せいかみちびいて魅力みりょくあるはな、それまじり、当期とうきはな鮮妍『せんけん』って盛上もりあがってる。へきせいや、浅黄あさぎをまぜて、大空おおぞらあおをうっとりさせる。くつろいだ白雲しろくも悠々ゆうゆうあゆみはこばしてる、そこにはなひかりにおい微風そよかぜ饗❼きょうえんがある。

 食物しょくもつには、たけのこ孟宗もうそうのシユンはぎて淡❶はちく『ま』たけ歯切はぎれのよい品種ひんしゅわたくしたちをむかへる。魚類ぎょるいはそろそろたにがわしょうしゃさいりんゆめはいる、夕顔ゆうがおなえ支柱しちゅうへ、金魚きんぎょはちしずめてやる、いれも、❹❹きせつよりのしたしみである。

 このさい❼中ぼうちゅう寸暇すんかいて、すわっていてる、場所ばしょはあまりものかないにわきの❻敷ざしきがいい、新茶しんちゃ一椀いっぱいすすってるのもいい、これはけっして贅沢ぜいたくでも閑人かんじんでもない。そこに、なにものかあらきよめられなぐさめられ、そのしたからひしひしとこころあがってるものがあるはずである。生活せいかつ行進こうしんきょく新譜しんぷである。ひと❹❹きせつ黙示もくしたいして詩人しじんであるところの素質そしつ権利けんりってる。しん詩人しじんとは万物ばんぶつそくして生活せいかつりょく源泉げんせんみいひとをい

コンテンツこんてんつ 


作品さくひんめい初夏しょか
著者ちょしゃめい岡本おかもと かの

 人生じんせい甘酸かんさんあじけてるほど、季節きせつ有難ありがたわかってる。それは「花時はなどきたがへず」といった――季節きせつ人間にんげんよりてになるとい意味いみ警醒けいせいてき観念かんねんからでもあう。季節きせつかた多種たしゅ多様たよう一概いちがいにはりっしられないが、かた単純たんじゅん素朴そぼくなほど、季節きせつあじひとめるうである。

 このごろ季節きせつ長所ちょうしょあかるく、瑞々みずみずしく、さわやかなことである。たいがい憂愁ゆうしゅうも、しばしわすれさせてれる、じょうりょくじゅ重厚じゅうこうみどりバツクばつくたいして鬱金うこんいろこないたうな灌木かんぼく新芽しんめ、あらゆるかたちの「てん」と、あらゆるかたちの「かたまり」とで清新せいしん希望きぼうくに構成こうせいする若葉わかばしげり、れどかず、ながむれどながつきせぬこころちがする。

 には晩春ばんしゅんさきへて、なおとろへをせないはな、すでに盛夏せいかみちびいて魅力みりょくあるはな、それまじり、当期とうきはな鮮妍『せんけん』って盛上もりあがってる。へきせいや、浅黄あさぎをまぜて、大空おおぞらあおをうっとりさせる。くつろいだ白雲しろくも悠々ゆうゆうあゆみはこばしてる、そこにはなひかりにおい微風そよかぜ饗宴きょうえんがある。

 食物しょくもつには、たけのこ孟宗もうそうシユンしゆんぎて淡竹はちく『ま』たけ歯切はぎれのよい品種ひんしゅわたくしたちをむかへる。魚類ぎょるいはそろそろたにがわしょうしゃさいりんゆめはいる、夕顔ゆうがおなえ支柱しちゅうへ、金魚きんぎょはちしずめてやる、いれも、季節きせつよりのしたしみである。

 このさい忙中ぼうちゅう寸暇すんかいて、すわっていてる、場所ばしょはあまりものかないにわきの座敷ざしきがいい、新茶しんちゃ一椀いっぱいすすってるのもいい、これはけっして贅沢ぜいたくでも閑人かんじんでもない。そこに、なにものかあらきよめられなぐさめられ、そのしたからひしひしとこころあがってるものがあるはずである。生活せいかつ行進こうしんきょく新譜しんぷである。ひと季節きせつ黙示もくしたいして詩人しじんであるところの素質そしつ権利けんりってる。しん詩人しじんとは万物ばんぶつそくして生活せいかつりょく源泉げんせんみいひとをい

■ 原書情報(青空文庫) 図書カード:No.4679(新字旧仮名) https://www.aozora.gr.jp/cards/000076/card4679.html https://www.aozora.gr.jp/cards/000076/files/4679_26899.html 底本:「日本の名随筆 別巻14 園芸」作品社    1992(平成4)年4月25日第1刷発行 底本の親本:「岡本かの子全集 第十二巻」冬樹社    1976(昭和51)年9月 入力:渡邉 つよし 校正:門田 裕志
■ 漢字の説明( Explanation of kanji ) 

チク・たけ
bambooばむぶー

キ・すえ
seasonしーずん

セツ・㋙セチ・ふし・▲みさお・▲のっと
sectionせくしゃんmelodyめらでぃtuneてぃゅーんjointじょいんとtimeたいむoccasionぁけいじゃん

ザ・㊥すわる・▲いま
seatしーとplaceぷれいすgatheringぎゃずりんぐpedestalぺだすとるpositionぱじしゃん

にお
odourおうだscentせんとaromaぁろうまsmellすめる

エン・▲うたげ・▲たのしむ
banquetばんくぅいとfeastふぃーすとpartyぱーてぃ

カン・▲ひろい・▲ゆるやか・▲くつろ
relaxりらくすunbendぁんべんどslowすろう downだうん

ジン・くす・きる・かす・▲すがれる・▲ことごと
devoteでぃゔぉうとrunらんoutあうとentirelyいんたいぁりwhollyほうり

ボウ・▲モウ・いそがしい・▲せわしい
busyびじengagedいんげいじどoccupiedあくきゃばいど

ショク・▲ソク・れる・さわ
touchたちfeelふぃーるaffectぁふぇくとcontactかんたくとdisperseでぃすぱーす
(付記,Note)
※ 最初の行は音訓読みを記載しています。カタカナは音読み、ひらがなルビは訓読みです。
※ ▲は常用外の読み方です。㊥は中学・㋙は高校で習う読み方です。漢検・漢字辞典の記載に準拠しています。
※ ▲ is a non-regular reading. ㊥ is the reading learned in junior high school and ㋙ is the reading learned in high school.
■ 漢字のリンク集/書き順&意味 , stroke order:Mojinavi , Another languages:Google , Bing
1小1 ❶MojnaviGoogleBing
2小4 ❹MojnaviGoogleBing
3小4 ❹MojnaviGoogleBing
4小6 ❻MojnaviGoogleBing
5中学 ❼MojnaviGoogleBing
6中学 ❼MojnaviGoogleBing
7中学 ❼MojnaviGoogleBing
8中学 ❼MojnaviGoogleBing
9中学 ❼MojnaviGoogleBing
10中学 ❼MojnaviGoogleBing
★★★ 各小説投稿サイトへのリンク集(各投稿サイトでも公開しています) ★★★
Q:青空文庫って、何ですか?
A:1997年に始まったボランティア活動で、誰にでもアクセスできる自由な電子本を、共有可能なものとして図書館のようにインターネット上に集めようとしております。現在は、日本国内で著作権保護期間の満了した作品を中心に、ボランティアのみなさんの力によって電子化作業を進めています。青空文庫はそういった電子化活動のための、またその成果物をアーカイヴしておくための場でもあり、そこからコピーされた本の集成や活用事例もまた〈青空文庫〉と呼ばれることがあります。
Q: What is Aozora Bunko?
A: The volunteer activities, which began in 1997, the free e-book that can be accessed by anyone in, we are going to gather on the Internet like a library as a thing that can be shared. Currently, we are proceeding with digitization work with the help of volunteers, focusing on works whose copyright protection period has expired in Japan. Aozora Bunko is a place for such digitization activities and for archiving the deliverables, and the collection and use cases of books copied from it are also sometimes called “Aozora Bunko”.
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