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ルビ付きテキスト

第91話 対州厳原港にて・長塚節(旧字旧仮名)


■ 伏字ふせじ漢字かんじ

※ ❶いち~から❻ろくは小1しょういち~から小6しょうろく、❼ななは中学ちゅうがくで覚おぼえる常用じょうよう漢字かんじです。
小2,❷: 汽
小3,❸: 客 , 荷 , 路
中学,❼: 姓 , 巾 , 慢 , 獲 , 瓦 , 皆

■ 学習がくしゅうコンテンツ  

※ 読よみ仮名がなで漢字『かんじ』(『かんじ』)の様ように括弧かっこの付ついた漢字かんじは原書げんしょで読よみ仮名がなが付ついている漢字かんじです。
  旧きゅう仮名かな遣づかいは新しん仮名かな遣づかいに変かえている場合ばあいもあります。


作品さくひん名めい:對たい州しゅう嚴原いずはら港こうにて
著者ちょしゃ名めい:長塚ながつか 節たかし

 對たい州しゅうへ渡わたるには博多はかたから夜よる出でて朝あさ着つく。博多はかたへ渡わたるにもさそうである。❷船きせんは❸物にもつを主おもにして居いるのだから❸きゃく少すくなくして我々われわれはみじめである。何ど處こへ行いっても朝鮮ちょうせんといふうことをいふう。釜山ぷさんなども對たい州しゅうの人ひとが眞先まっさきに行いってそれから壹州いっしゅうの人間にんげんが行いって開ひらいた相そうだ。北きたの方ほうへ行いって見みると面おも白しろ相そうだが船ふねは不便ふべんだし陸❸りくろは險けん惡あくだし病人びょうにんには迚とても駄目だめだ。丈夫じょうぶの人ひとがゆっくり歩あるいて居いるのには屹度きっといゝい處ところである。漁りょうで持もって居いる國くにだから百ひゃく❼しょうは下手へたらしい。昨日きのう竹たけ敷しきから歸かえりに馬車ばしゃで一緒いっしょになった百ひゃく❼しょうが肥料『こえ』をすると稻いねが駄目だめになるから只ただ作つくるのみだといふう。技手ぎしゅがついてゝてさそうなんだから驚おどろく。伊勢いせ蝦えびを自❼じまんでフライにしてくれたが始はじめて見みた。よく❼とれる相そうだ。然しかし野菜やさいは氣きのきいたのは博多はかたから來くるさそうだ。對馬つしまの唄うたに曰いわく

  對たい州しゅう名物めいぶつ鳶とんびに烏からす又またも名物めいぶつ屋根やねの石いし

 然しかし鳶とんびも烏からすも殆ほとんど目めに觸ふれず。昨日きのう竹たけ敷しきまで行いって見みたが途中とちゅうの民家みんかは❼みな❼かわら葺ぶきで石いしを載のせたといふゆうのは少すくなかった。

  女おんなの馬うま乘のり脊中『せな』に籠かご三み❼はばの前まえ掛かけカス卷まき横よこぐはへ

 在ざいから嚴いず原はらの港みなとへ薪『まき』など賣うりに來くる女おんなが歸かえりに馬上ばじょうで辨べん當とう代がわりに横よこかぢじりに噛かじるのがカス卷まきで、それは菓子かしの名なである。馬うまは❼みな小ちいさい。さそうして島しまの産うまれで無なければ蹄ひづめを痛いためて用ようをなさぬ相そうだ。
 朝あさ干ほして居いた烏賊『いか』が竹たけ敷しきから歸かえりに見みると餘よ程ほど鯣『するめ』の臭におひいになってゐいた。對たい州しゅうも一寸ちょっと覗のぞいただけでもう壹州いっしゅうへ渡わたるのだ、仕方しかたが無ない。今日きょうは雨あめである。(六ろく月がつ廿にじゅう六ろく日にち)

   (明治めいじ四よん十じゅう五ご年ねん七しち月がつ二日ふつか、國民こくみん新聞しんぶん 所載しょさい)

■ コンテンツこんてんつ  


作品さくひん名めい:對たい州しゅう嚴原いずはら港こうにて
著者ちょしゃ名めい:長塚ながつか 節たかし

 對たい州しゅうへ渡わたるには博多はかたから夜よる出でて朝あさ着つく。博多はかたへ渡わたるにもさそうである。汽船きせんは荷物にもつを主おもにして居いるのだから客きゃく少すくなくして我々われわれはみじめである。何ど處こへ行いっても朝鮮ちょうせんといふうことをいふう。釜山ぷさんなども對たい州しゅうの人ひとが眞先まっさきに行いってそれから壹州いっしゅうの人間にんげんが行いって開ひらいた相そうだ。北きたの方ほうへ行いって見みると面おも白しろ相そうだが船ふねは不便ふべんだし陸路りくろは險けん惡あくだし病人びょうにんには迚とても駄目だめだ。丈夫じょうぶの人ひとがゆっくり歩あるいて居いるのには屹度きっといゝい處ところである。漁りょうで持もって居いる國くにだから百ひゃく姓しょうは下手へたらしい。昨日きのう竹たけ敷しきから歸かえりに馬車ばしゃで一緒いっしょになった百ひゃく姓しょうが肥料『こえ』をすると稻いねが駄目だめになるから只ただ作つくるのみだといふう。技手ぎしゅがついてゝてさそうなんだから驚おどろく。伊勢いせ蝦えびを自慢じまんでフライふらいにしてくれたが始はじめて見みた。よく獲とれる相そうだ。然しかし野菜やさいは氣きのきいたのは博多はかたから來くるさそうだ。對馬つしまの唄うたに曰いわく

  對たい州しゅう名物めいぶつ鳶とんびに烏からす又またも名物めいぶつ屋根やねの石いし

 然しかし鳶とんびも烏からすも殆ほとんど目めに觸ふれず。昨日きのう竹たけ敷しきまで行いって見みたが途中とちゅうの民家みんかは皆みな瓦かわら葺ぶきで石いしを載のせたといふゆうのは少すくなかった。

  女おんなの馬うま乘のり脊中『せな』に籠かご三み巾はばの前まえ掛かけカスかす卷まき横よこぐはへ

 在ざいから嚴いず原はらの港みなとへ薪『まき』など賣うりに來くる女おんなが歸かえりに馬上ばじょうで辨べん當とう代がわりに横よこかぢじりに噛かじるのがカスかす卷まきで、それは菓子かしの名なである。馬うまは皆みな小ちいさい。さそうして島しまの産うまれで無なければ蹄ひづめを痛いためて用ようをなさぬ相そうだ。
 朝あさ干ほして居いた烏賊『いか』が竹たけ敷しきから歸かえりに見みると餘よ程ほど鯣『するめ』の臭におひいになってゐいた。對たい州しゅうも一寸ちょっと覗のぞいただけでもう壹州いっしゅうへ渡わたるのだ、仕方しかたが無ない。今日きょうは雨あめである。(六ろく月がつ廿にじゅう六ろく日にち)

   (明治めいじ四よん十じゅう五ご年ねん七しち月がつ二日ふつか、國民こくみん新聞しんぶん 所載しょさい)

■ 原書情報(青空文庫) 図書カード:No.4608(旧字旧仮名) https://www.aozora.gr.jp/cards/000118/card4608.html https://www.aozora.gr.jp/cards/000118/files/4608_15630.html 底本:「長塚節全集 第二巻」春陽堂書店    1977(昭和52)年1月31日発行 入力:林 幸雄 校正:今井忠夫
■ 漢字の説明( Explanation of kanji )  
❷
汽
キ・▲汽ゆげ
steamすてぃーむ
❸
客
キャク・㊥カク・▲客まろうど
customerかすたま ,guestげすと ,visitorゔぃじた ,callerきゃら
❸
荷
㊥カ・荷に・▲荷になう・▲荷はす
loadろうど ,cargoかーごう ,baggageばぎじ ,burdenばーどん
❸
路
ロ・路じ・▲路みち・▲路くるま
roadろうど ,routeるーと ,pathぱす ,circuitさーきと
❼
姓
セイ・ショウ・▲姓かばね
surnameさーねいむ ,familyふぁむり nameねいむ
❼
巾
キン・▲巾きれ・▲巾ふきん
towelたうる ,clothくろーす ,fabricふぁぶりく ,textileてくすたいる ,widthぅいどす
❼
慢
マン・▲バン・▲慢おこたる・▲慢おごる・▲慢あなどる
prideぷらいど
❼
獲
カク・獲える
catchきゃち ,gainげいん ,takeていく ,captureきゃぷちゃ ,winぅいん
❼
瓦
㋙ガ・瓦かわら・▲瓦かわらけ・▲瓦ぐらむ
roofるーふ tileたいる ,claywareくれいぅえぁ ,earthenwareあーすんぅえら
❼
皆
カイ・▲皆みな
allおーる ,everyoneえゔりわん everybodyえゔりばでぃ
(付記,Note)
※ 最初の行は音訓読みを記載しています。カタカナは音読み、ひらがなルビは訓読みです。
※ ▲は常用外の読み方です。㊥は中学・㋙は高校で習う読み方です。漢検・漢字辞典の記載に準拠しています。
※ ▲ is a non-regular reading. ㊥ is the reading learned in junior high school and ㋙ is the reading learned in high school.
■ 漢字のリンク集/書き順&意味 , stroke order:Mojinavi , Another languages:Google , Bing
1小2 ❷汽MojnaviGoogleBing
2小3 ❸客MojnaviGoogleBing
3小3 ❸荷MojnaviGoogleBing
4小3 ❸路MojnaviGoogleBing
5中学 ❼姓MojnaviGoogleBing
6中学 ❼巾MojnaviGoogleBing
7中学 ❼慢MojnaviGoogleBing
8中学 ❼獲MojnaviGoogleBing
9中学 ❼瓦MojnaviGoogleBing
10中学 ❼皆MojnaviGoogleBing
★★★ 各小説投稿サイトへのリンク集(各投稿サイトでも公開しています) ★★★
Q:青空文庫って、何ですか?
A:1997年に始まったボランティア活動で、誰にでもアクセスできる自由な電子本を、共有可能なものとして図書館のようにインターネット上に集めようとしております。現在は、日本国内で著作権保護期間の満了した作品を中心に、ボランティアのみなさんの力によって電子化作業を進めています。青空文庫はそういった電子化活動のための、またその成果物をアーカイヴしておくための場でもあり、そこからコピーされた本の集成や活用事例もまた〈青空文庫〉と呼ばれることがあります。
Q: What is Aozora Bunko?
A: The volunteer activities, which began in 1997, the free e-book that can be accessed by anyone in, we are going to gather on the Internet like a library as a thing that can be shared. Currently, we are proceeding with digitization work with the help of volunteers, focusing on works whose copyright protection period has expired in Japan. Aozora Bunko is a place for such digitization activities and for archiving the deliverables, and the collection and use cases of books copied from it are also sometimes called “Aozora Bunko”.
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