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ルビ付きテキスト

第94話 今戸狐・小山内薫(新字新仮名)


伏字ふせじ漢字かんじ

いちからろく小1しょういちから小6しょうろくなな中学ちゅうがくおぼえる常用じょうよう漢字かんじです。
小1,❶: 車
小2,❷: 番 , 矢
小5,❺: 査
小6,❻: 尺 , 片
中学,❼: 匠 , 奴 , 巡 , 遅

学習がくしゅうコンテンツ 

仮名がな漢字『かんじ』(『かんじ』)のよう括弧かっこいた漢字かんじ原書げんしょ仮名がないている漢字かんじです。
  きゅう仮名かなづかいはしん仮名かなづかいにえている場合ばあいもあります。


作品さくひんめい今戸いまときつね
著者ちょしゃめい小山内おさない かおる

 これはきつねたぬきだろう、矢張『やっぱり』俳優『やくしゃ』だが、数年『すねん』以前いぜんのこと、いま沢村『さわむら』宗十郎『そうじゅうろう』門弟もんてい『なにがし』というおとこが、『ある』なつばん他所『よそ』からのかえりが大分だいぶんおそくなったので、折詰おりづめ❻手かたてにしながら、てくてく馬道『うまみち』とおりをいそいでやってて、さて聖天『しょうてん』した今戸橋『いまどばし』のところまでると、四辺『あたり』一面いちめん出水『でみず』で、最早『もはや』如何『どう』することも出来できない、❶屋くるまやおもったが、あたりには、ひとかげもない、はしうえ一❻いっしゃくばかりみずて、濁水『だくすい』がゴーゴーというおとてて、隅田川『すみだがわ』ほう流込『ながれこ』んでいる、致方『しかた』がないので、衣服『きもの』『すそ』を、おもうさま絡上『まくりあ』げて、なにしろこのきゅうりゅう『ゆえ』ながされてはいち大事だいじと、いぬよう四這『よつんばい』になって、折詰おりづめくち『くわ』えながら無我むが夢中むちゅう一生いっしょう懸命けんめいになって、「危険『あぶない』危険『あぶない』」と自分じぶんさけびながら、『ようや』く、むこうの橋詰『はしつめ』までくると、其処『そこ』しろ着物きものおとこが、一人ひとりっていて『さかん』わらっているのだ、おかしなやつだとおもって不図『ふと』ると、交番所『こうばんしょ』まえっていた❼❺じゅんさだ、❼❺じゅんさわらいながら「一体『いったい』いまなにをしていたのか」とくから、なにしろこんな、出水『しゅっすい』到底『とうてい』わたれないから、こうしてたのだといいながら、ふと『うしろ』振返『ふりかえ』ってると、出水『しゅっすい』どころか、みちもからからにかわいて、はしうえも、平時『いつも』すこしもかわりがない、おやッ、こいつは一❷いちばんやられたわいと、にした折詰おりづめると、こは如何『いか』に、そこ何時『いつ』しかとれて、うちはからんからん、『つい』おおわらいをして、それからまた師❼ししょう『うち』かえっても、『さかん』『みんな』からわらわれたとのことだ。

コンテンツこんてんつ 


作品さくひんめい今戸いまときつね
著者ちょしゃめい小山内おさない かおる

 これはきつねたぬきだろう、矢張『やっぱり』俳優『やくしゃ』だが、数年『すねん』以前いぜんのこと、いま沢村『さわむら』宗十郎『そうじゅうろう』門弟もんてい『なにがし』というおとこが、『ある』なつばん他所『よそ』からのかえりが大分だいぶんおそくなったので、折詰おりづめ片手かたてにしながら、てくてく馬道『うまみち』とおりをいそいでやってて、さて聖天『しょうてん』した今戸橋『いまどばし』のところまでると、四辺『あたり』一面いちめん出水『でみず』で、最早『もはや』如何『どう』することも出来できない、車屋くるまやおもったが、あたりには、ひとかげもない、はしうえ一尺いっしゃくばかりみずて、濁水『だくすい』ゴーゴーごーごーというおとてて、隅田川『すみだがわ』ほう流込『ながれこ』んでいる、致方『しかた』がないので、衣服『きもの』『すそ』を、おもうさま絡上『まくりあ』げて、なにしろこのきゅうりゅう『ゆえ』ながされてはいち大事だいじと、いぬよう四這『よつんばい』になって、折詰おりづめくち『くわ』えながら無我むが夢中むちゅう一生いっしょう懸命けんめいになって、「危険『あぶない』危険『あぶない』」と自分じぶんさけびながら、『ようや』く、むこうの橋詰『はしつめ』までくると、其処『そこ』しろ着物きものおとこが、一人ひとりっていて『さかん』わらっているのだ、おかしなやつだとおもって不図『ふと』ると、交番所『こうばんしょ』まえっていた巡査じゅんさだ、巡査じゅんさわらいながら「一体『いったい』いまなにをしていたのか」とくから、なにしろこんな、出水『しゅっすい』到底『とうてい』わたれないから、こうしてたのだといいながら、ふと『うしろ』振返『ふりかえ』ってると、出水『しゅっすい』どころか、みちもからからにかわいて、はしうえも、平時『いつも』すこしもかわりがない、おや、こいつは一番いちばんやられたわいと、にした折詰おりづめると、こは如何『いか』に、そこ何時『いつ』しかとれて、うちはからんからん、『つい』おおわらいをして、それからまた師匠ししょう『うち』かえっても、『さかん』『みんな』からわらわれたとのことだ。

■ 原書情報(青空文庫) 図書カード:No.49198(新字新仮名) https://www.aozora.gr.jp/cards/000479/card49198.html https://www.aozora.gr.jp/cards/000479/files/49198_33026.html 底本:「文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会」ちくま文庫、筑摩書房    2007(平成19)年7月10日第1刷発行 底本の親本:「怪談会」柏舎書楼    1909(明治42)年発行 入力:門田裕志 校正:noriko saito
■ 漢字の説明( Explanation of kanji ) 

シャ・くるま
vehicleびーくるcarかーwheelぅいーるcarriageきゃりじ

バン・▲ハン・▲ハ・▲つがい・▲つがう・▲つがえる
numberなむばturnたーんlookoutるかうとcombinationかむばねぃしゃん

㋙シ・
arrowあろうsagittaさじたarrowheadあろうへど

サ・▲しらべる
inspectionいんすぺくしゃんresearchりさーちsurveyさゔぇいinvestigationいんゔぇすたげいしゃんexaminationいぐじゃまねいしゃん

シャク・▲セキ・▲さし・▲ものさし・▲わず
scaleすけいるlengthれんぐすmeasureめじゃruleるーるrulerるーら

㊥ヘン・かた・▲きれ・▲ひら・▲ぺんす
oneわん pieceぴーすoneわん sideさいどoneわん scaleすけいるfragmentふらぐまんと

ショウ・▲たくみ
artisanあーたざんcarpenterかーぱんたideaあいでぃぁmechanicまきゃにく

ド・▲ヌ・▲やっこ・▲やつ
servantさーゔぁんとguyがいchapちゃぷfellowふぃろう

ジュン・めぐる・▲まわ
cyclesさいくるずroundsらうんずcircuitsさーきっtourとぅぁ

チ・おくれる・おくらす・おそ
slowすろうlateれいとoverdueおうゔぁどゅーdelayでぃれぃlagらぐ
(付記,Note)
※ 最初の行は音訓読みを記載しています。カタカナは音読み、ひらがなルビは訓読みです。
※ ▲は常用外の読み方です。㊥は中学・㋙は高校で習う読み方です。漢検・漢字辞典の記載に準拠しています。
※ ▲ is a non-regular reading. ㊥ is the reading learned in junior high school and ㋙ is the reading learned in high school.
■ 漢字のリンク集/書き順&意味 , stroke order:Mojinavi , Another languages:Google , Bing
1小1 ❶MojnaviGoogleBing
2小2 ❷MojnaviGoogleBing
3小2 ❷MojnaviGoogleBing
4小5 ❺MojnaviGoogleBing
5小6 ❻MojnaviGoogleBing
6小6 ❻MojnaviGoogleBing
7中学 ❼MojnaviGoogleBing
8中学 ❼MojnaviGoogleBing
9中学 ❼MojnaviGoogleBing
10中学 ❼MojnaviGoogleBing
★★★ 各小説投稿サイトへのリンク集(各投稿サイトでも公開しています) ★★★
Q:青空文庫って、何ですか?
A:1997年に始まったボランティア活動で、誰にでもアクセスできる自由な電子本を、共有可能なものとして図書館のようにインターネット上に集めようとしております。現在は、日本国内で著作権保護期間の満了した作品を中心に、ボランティアのみなさんの力によって電子化作業を進めています。青空文庫はそういった電子化活動のための、またその成果物をアーカイヴしておくための場でもあり、そこからコピーされた本の集成や活用事例もまた〈青空文庫〉と呼ばれることがあります。
Q: What is Aozora Bunko?
A: The volunteer activities, which began in 1997, the free e-book that can be accessed by anyone in, we are going to gather on the Internet like a library as a thing that can be shared. Currently, we are proceeding with digitization work with the help of volunteers, focusing on works whose copyright protection period has expired in Japan. Aozora Bunko is a place for such digitization activities and for archiving the deliverables, and the collection and use cases of books copied from it are also sometimes called “Aozora Bunko”.
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