■ コンテンツこんてんつ  

作品サクヒン名メイ：美ウツクしいシイだけダケでデはワ間マにニあはないアハナイ
著者チョシャ名メイ：加藤カトウ 道夫ミチオ


　詩シとト劇ゲキとトはワ元來ガンライ、本質的ホンシツテキにニ切キりリ離ハナせぬセヌ關係カンケイにニあるアルがガ、「思想シソウ」がガ劇ゲキにニ不可フカ缺ケツのノものモノでデあるアルとトはワ特トクにニ言イひヒきれキレないナイ。我々ワレワレはワ「思想シソウ」のノないナイ劇ゲキにニはワ飽アきるキル程ホド觸フれてレテ來キたタしシ、美ウツクしいシイとかトカ面白オモシロいイとかトカ云イふフ點テンでデ稱讃ショウサンもモしてシテ來キたタ。思想シソウ劇ゲキとト云イふフ名稱メイショウはワ或アるル時期ジキにニはワ「退屈タイクツ」のノ代名詞ダイメイシのノ樣ヨウにニさサへエ使ツカはれハレてテゐイたタ。美ウツクしいシイのノはワいいイイ。面白オモシロいイのノはワいいイイ。だがダガ、美ウツクしいシイだけダケでデはワ、面白オモシロいイだけダケでデはワ間マにニ合アはワぬヌ時代ジダイにニなつてナツテしまつたシマツタやうヤウでデあるアル。劇ゲキのノ思想性シソウセイがガ反省ハンセイされサレねばネバならぬナラヌ時トキでデあらうアラウ。
　僕ボクはワこのコノ頃ゴロでデはワ、別ベツにニ斬新ザンシン奇拔キバツなナ戲曲ギキョクをヲ書カきキたいタイなどナドとトはワ思オモはワないナイがガ、唯タダ、舞臺ブタイをヲ通トオしてシテ眞マコトにニ今日的コンニチテキなナ世界像セカイゾウやヤ人間像ニンゲンゾウにニ僕ボク自身ジシンのノイデエいでえをヲ託タクしシたいタイとト云イふフ切實セツジツなナ希ネガひヒにニしきりシキリにニとらトラへエられるラレル。新劇シンゲキはワ今イマまでマデのノやうヤウなナ日常的ニチジョウテキなナ小ショウ世界セカイのノ描寫ビョウシャやヤ心理シンリ風俗フウゾクのノ展開テンカイからカラ大オオきなキナ此コのノ時代ジダイのノドラマどらまにニまでマデ飛躍ヒヤクしシてテ行イかねカネばバ、やがてヤガテ命數メイスウがガ盡ツきキてテしまシマふウのノでデはワないナイかカ、とトさサへエ思オモふフ。演劇エンゲキのノ言葉コトバがガ多愛タワイもモないナイ娯樂ゴラクのノ爲タメだダとかトカ、さサゝサやかヤカなナ心理的シンリテキ共鳴キョウメイのノ爲タメにニのみノミあるアルべきベキ時代ジダイでデはワなくナクなつたナツタやうでヤウデあるアル。人々ヒトビトはワ依然イゼン劇場ゲキジョウへエカタルシスかたるしすをヲ求モトめてメテ行イくク。だがダガ彼等カレラはワ個人的コジンテキ苦惱クノウよりもヨリモもつとモツト大オオきなキナ時代的ジダイテキ苦惱クノウをヲ背負セオつてツテゐイるル。彼等カレラのノ求モトめるメルカタルシスかたるしすのノ概念ガイネンそのものソノモノがガ既スデにニ變カワつてツテ來キてテゐイるルのだノダ。
　寫實シャジツ主義シュギのノ時代ジダイにニはワカタルシスかたるしすのノ概念ガイネンはワ個別的コベツテキでデあつたアツタ。可視的カシテキ世界セカイのノ描寫ビョウシャとト人間ニンゲン性格セイカクのノまことマコトらしきラシキ再現サイゲンにニ依ヨつてツテ人々ヒトビトはワ夫々ソレゾレのノ心裡シンリにニ個別的コベツテキなナカタルシスかたるしすをヲ行オコナつたツタ。更サラにニ心理シンリ主義シュギはワ演劇エンゲキをヲ見ミえエざるザル人間ニンゲン心理シンリのノ内面ナイメンへエとト深フカめたメタ。寫實シャジツ主義シュギとト心理シンリ主義シュギがガ結ムスびつくとビツクト、登場トウジョウ人物ジンブツのノ外的ガイテキ表情ヒョウジョウとト内的ナイテキ表情ヒョウジョウのノ複雜フクザツなナ葛藤カットウがガ尤モットもモらしいラシイ事件ジケンやヤ出來デキ事ゴトをヲ通ツウじてジテ異樣イヨウにニ鮮アザヤかカにニ浮彫フチョウされてサレテ來クるルやうヤウにニなつたナツタがガそのソノ感銘カンメイもモ矢張ヤハりリ個別的コベツテキなナものモノでデ、個人コジン々々コジンのノ内的ナイテキ苦惱クノウがガ心理的シンリテキ共鳴キョウメイをヲ呼ヨぶブにニ過スぎないギナイ場合バアイがガ多オオいイ。
　僕ボクはワ人々ヒトビトのノ心ココロにニもつとモツト此コのノ時代ジダイにニ普遍的フヘンテキなナカタルシスかたるしすがガ行オコナはれハレねばネバならないナラナイとト思オモふフ。此コのノ時代ジダイにニ生イきてキテゐイるル我々ワレワレにニ共通キョウツウなナ、切實セツジツなナ普遍フヘン的テキ感銘カンメイがガ生イきキてテ來コなけれナケレばバならないナラナイ、とト思オモふフ。それソレはワもはやモハヤ、寫實シャジツ主義シュギやヤ心理シンリ主義シュギのノ能ヨくク爲ナすスところトコロでデはワないナイ。今日コンニチのノ人間ニンゲン達タチにニ共通キョウツウなナ不幸フコウ、矛盾ムジュン、不條理フジョウリ、或アルひヒはワ又マタ我々ワレワレのノ望ノゾみミ得ウるル何等ナンラかカのノ可能性カノウセイにニ對タイしてシテ作者サクシャのノ抱イダくク「思想シソウ」のみノミがガそのことソノコトをヲ能ヨくク爲ナすスでデあらうアラウ。己オノれレのノ思想的シソウテキ貧困ヒンコンをヲ嘆ナゲくク若ワカいイ劇作家ゲキサッカのノ朝夕アサユウ反省ハンセイしてシテ止ヤまぬマヌ命題メイダイでデあるアル。