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ルビ付きテキスト

第2話 小説の読者・芥川龍之介(新字旧仮名)


伏字ふせじ漢字かんじ

いちからろく小1しょういちから小6しょうろくなな中学ちゅうがくおぼえる常用じょうよう漢字かんじです。
小1,❶: 生
小2,❷: 何 , 活 , 自 , 近
小3,❸: 持 , 級 , 身 , 階
小4,❹: 説

学習がくしゅうコンテンツ 

仮名がな漢字『かんじ』(『かんじ』)のよう括弧かっこいた漢字かんじ原書げんしょ仮名がないている漢字かんじです。


作品さくひんめい小説しょうせつ読者どくしゃ
著者ちょしゃめい芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけ

 ぼく経験けいけんするところによれば、いま小❹しょうせつ読者どくしゃうものは、大抵『たいてい』はその小❹しょうせつすじんでる。そのぎには、その小❹しょうせつなか『か』かれた❶❷せいかつ憧憬『しようけい』つてる。これには時々ときどき不思議ふしぎ気❸きもちがしないことはない。
 げんぼくつてひとなどは随分『ずいぶん』経済的けいざいてきくるしいらしをしてながら、富豪ふごう華族かぞくばかり通俗つうぞく小❹しょうせつ愛読あいどくしてる。のみならず、このひと❶❷せいかつちか❶❷せいかついた小❹しょうせつには全然ぜんぜん興味きょうみつてない。
 第三だいさんには、第二だいに反対はんたいに、そのぎには読者どくしゃ❷❸じしん❶❷せいかつちかいものばかりもとめてる。
 ぼくはこれらをかならずしもわるいこととはおもつてない。このみっつの心❸こころもちは、同時どうじぼく❷❸じしん『うち』にも存在そんざいしてる。ぼくすじ面白おもしろ小❹しょうせつ愛読あいどくしてる。それからぼく❷❸じしん❶❷せいかつとお❶❷せいかついた小❹しょうせつ愛読あいどくしないことはない。最後さいごに、ぼく❷❸じしん❶❷せいかつちか小❹しょうせつ愛読あいどくしてることは勿論もちろんである。
 しかし、それらの小❹しょうせつ鑑賞かんしょうするときに、ぼく評価ひょうか決定けっていするものはかならずしも、それらの気❸きもちではない。ぼくが(読者どくしゃとして)世間せけん小❹しょうせつ読者どくしゃちがつてるとするならば、かうてんにあるとおもつてる。ではなにぼく評価ひょうか決定けっていするかとへば感銘『かんめい』ふかさとでもふほかはない。それにはすじ面白おもしろさとか、ぼく❷❸じしん❶❷せいかつとおいこととか、あるいはまたぼく❷❸じしん❶❷せいかつちかいこととかふことも勿論もちろん幾分いくぶん影響えいきょうしてるだらう。しかしそれらの影響えいきょうのほかに『ま』なにかあることをしんじてる。
 このなにかにうごかされる読者どくしゃ一群『いちぐん』が、つまり読書どくしょ❸❸かいきゅうばれるのである。あるい文芸的ぶんげいてき知識ちしき❸❸かいきゅうばれるのである。
 かう❸❸かいきゅう存外『ぞんぐわい』せまい。おそらくは、西洋せいようよりも一層いっそうせまいだらう。ぼくいま、かう事実じじつ善悪ぜんあくろんじてるのではない。ただ事実じじつとして一寸『ちよつと』はなすだけである。

  (昭和しょうわ二年にねん三月さんがつ

コンテンツこんてんつ 


作品さくひんめい小説しょうせつ読者どくしゃ
著者ちょしゃめい芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけ

 ぼく経験けいけんするところによれば、いま小説しょうせつ読者どくしゃうものは、大抵『たいてい』はその小説しょうせつすじんでる。そのぎには、その小説しょうせつなか『か』かれた生活せいかつ憧憬『しようけい』つてる。これには時々ときどき不思議ふしぎ気持きもちがしないことはない。
 げんぼくつてひとなどは随分『ずいぶん』経済的けいざいてきくるしいらしをしてながら、富豪ふごう華族かぞくばかり通俗つうぞく小説しょうせつ愛読あいどくしてる。のみならず、このひと生活せいかつちか生活せいかついた小説しょうせつには全然ぜんぜん興味きょうみつてない。
 第三だいさんには、第二だいに反対はんたいに、そのぎには読者どくしゃ自身じしん生活せいかつちかいものばかりもとめてる。
 ぼくはこれらをかならずしもわるいこととはおもつてない。このみっつの心持こころもちは、同時どうじぼく自身じしん『うち』にも存在そんざいしてる。ぼくすじ面白おもしろ小説しょうせつ愛読あいどくしてる。それからぼく自身じしん生活せいかつとお生活せいかついた小説しょうせつ愛読あいどくしないことはない。最後さいごに、ぼく自身じしん生活せいかつちか小説しょうせつ愛読あいどくしてることは勿論もちろんである。
 しかし、それらの小説しょうせつ鑑賞かんしょうするときに、ぼく評価ひょうか決定けっていするものはかならずしも、それらの気持きもちではない。ぼくが(読者どくしゃとして)世間せけん小説しょうせつ読者どくしゃちがつてるとするならば、かうてんにあるとおもつてる。ではなにぼく評価ひょうか決定けっていするかとへば感銘『かんめい』ふかさとでもふほかはない。それにはすじ面白おもしろさとか、ぼく自身じしん生活せいかつとおいこととか、あるいはまたぼく自身じしん生活せいかつちかいこととかふことも勿論もちろん幾分いくぶん影響えいきょうしてるだらう。しかしそれらの影響えいきょうのほかに『ま』なにかあることをしんじてる。
 このなにかにうごかされる読者どくしゃ一群『いちぐん』が、つまり読書どくしょ階級かいきゅうばれるのである。あるい文芸的ぶんげいてき知識ちしき階級かいきゅうばれるのである。
 かう階級かいきゅう存外『ぞんぐわい』せまい。おそらくは、西洋せいようよりも一層いっそうせまいだらう。ぼくいま、かう事実じじつ善悪ぜんあくろんじてるのではない。ただ事実じじつとして一寸『ちよつと』はなすだけである。

  (昭和しょうわ二年にねん三月さんがつ

■ 原書情報(青空文庫) 図書カード:No.3794(新字旧仮名) https://www.aozora.gr.jp/cards/000879/card3794.html https://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/3794_27310.html 底本:「筑摩全集類聚 芥川龍之介全集第四巻」筑摩書房    1971(昭和46)年6月5日初版第1刷発行    1979(昭和54)年4月10日初版第11刷発行 入力:土屋隆 校正:松永正敏
■ 漢字の説明( Explanation of kanji ) 

セイ・ショウ・きる・かす・ける・まれる・む・㊥う・える・やす・㊥なま・▲いのち・▲うぶ・▲る・▲
livingりびんぐ

㊥カ・なになん・▲いずれ・▲いず
whatわっと

カツ・▲きる・▲ける・▲かす
liveらいぶ

ジ・シ・みずから・▲おのずから・▲
selfせるふ

キン・▲コン・ちか
nearにあ

ジ・▲チ・
holdほーるど

キュウ・▲しな・▲くび
classくらす

シン・
bodyぼでぃ

カイ・▲きざはし・▲はしご・▲しな
stairsすてあーず

セツ・㋙ゼイ・▲エツ・く・▲よろこ
persuasionぱすうぇーじょん
(付記,Note)
※ 最初の行は音訓読みを記載しています。カタカナは音読み、ひらがなルビは訓読みです。
※ ▲は常用外の読み方です。㊥は中学・㋙は高校で習う読み方です。漢検・漢字辞典の記載に準拠しています。
※ ▲ is a non-regular reading. ㊥ is the reading learned in junior high school and ㋙ is the reading learned in high school.
■ 漢字のリンク集/書き順&意味 , stroke order:Mojinavi , Another languages:Google , Bing
1小1 ❶MojnaviGoogleBing
2小2 ❷MojnaviGoogleBing
3小2 ❷MojnaviGoogleBing
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6小3 ❸MojnaviGoogleBing
7小3 ❸MojnaviGoogleBing
8小3 ❸MojnaviGoogleBing
9小3 ❸MojnaviGoogleBing
10小4 ❹MojnaviGoogleBing
★★★ 各小説投稿サイトへのリンク集(各投稿サイトでも公開しています) ★★★
Q:青空文庫って、何ですか?
A:1997年に始まったボランティア活動で、誰にでもアクセスできる自由な電子本を、共有可能なものとして図書館のようにインターネット上に集めようとしております。現在は、日本国内で著作権保護期間の満了した作品を中心に、ボランティアのみなさんの力によって電子化作業を進めています。青空文庫はそういった電子化活動のための、またその成果物をアーカイヴしておくための場でもあり、そこからコピーされた本の集成や活用事例もまた〈青空文庫〉と呼ばれることがあります。
Q: What is Aozora Bunko?
A: The volunteer activities, which began in 1997, the free e-book that can be accessed by anyone in, we are going to gather on the Internet like a library as a thing that can be shared. Currently, we are proceeding with digitization work with the help of volunteers, focusing on works whose copyright protection period has expired in Japan. Aozora Bunko is a place for such digitization activities and for archiving the deliverables, and the collection and use cases of books copied from it are also sometimes called “Aozora Bunko”.
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